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【書評】幅広い領域を取り上げて概説!放送大学教材の「心理学概論」を読む

【書評】森津太子、向田久美子『心理学概論(放送大学教材)』(放送大学教育振興会) 書評

家族や仕事、日常のさまざまな出来事をきっかけに「心理学を学びたい!」と考える方は多いですよね。「誰かの助けになりたい」「自分自身のことをもっと知りたい」などその理由はさまざまあることと思います。

かくいう私も、高校卒業後に大学で心理学を専攻した一人です。その後、社会人となってからも心理学への興味は尽きず、休日に公開講座やセミナーに個人的に参加したりすることで勉強を続けていました。そうして数年が経ち、もう一度学問として心理学を学び直したいという気持ちがムクムクと湧いてきたのです。

しかしながら、すでに社会人になっており、学問に全力投球できるわけではないし、どうしたらよいのか…。そんな時に候補として急浮上したのが「放送大学」でした。放送大学は、学生が自身の都合の良いときに講義を視聴して必要な単位を修めれば卒業することもできる大学です。しかも、卒業に必要な最低金額は約77万円(2023年時点)と、一般的な大学に比べてかなり低価格です。

今回は、あらためて心理学を学びたいと考えている方へ、放送大学でぜひ受講したい「心理学概論('18)」の印刷教材(テキスト)をご紹介します。

書籍は全国の書店などで購入できます。放送大学生でない方も、本科目の講義はBS放送などのテレビで視聴可能です。詳しい視聴方法は以下をご参照ください。

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本講座の基本情報

本講座「心理学概論」は、放送大学で開講されている科目です。

  • 2018年度開設(2024年度に改訂予定)
  • 放送授業(テレビ配信)
  • 心理と教育コースの導入科目

具体的なシラバスはこちらからご参照ください。

放送授業はテレビで公開されており、書籍はAmazonほか各書店でお買い求めいただけます。各地域におけるテキスト取扱書店は下記をご参照ください。

こんな方にオススメ

  • 心理学を学びたい
  • お金をかけずに本格的な知識を得たい
  • 過去に心理学を学んでいたが、最新の知見に触れたい

目次

本書の目次は下記のとおりです。全15回の放送授業に沿った章立てとなっております。

 1 心理学とは
 2 心理学の研究方法
 3 知覚心理学
 4 学習心理学
 5 生理心理学
 6 比較心理学
 7 教育心理学
 8 発達心理学
 9 臨床心理学
10 パーソナリティ心理学
11 社会心理学
12 産業・組織心理学
13 文化心理学
14 心理統計学の役割
15 心理学を学ぶということ

心理学の広範な領域をカバーした入門書

公益社団法人日本心理学会が出している「認定心理士」という資格をご存じでしょうか?この資格は、心理学に関する標準的な基礎知識と基礎技術とを正規の課程において習得していることを認定する資格です。

本書では、この認定心理士を取得するために必要な心理学の領域を各章で取り上げており、まさに心理学というものを広く浅く学ぶことができるのです。

 本科目『心理学概論('18)』は、認定心理士の資格ではa領域に該当する。上述したように、心理学の下位領域(専門科目)は細かいものまで含めると膨大な数にのぼる。本書でそれらすべてを網羅することはできないが、心理学の幅広さが伝わるよう、第2章から第14章にわたって、主な領域を代表する分野を取り上げて概説する。読者にとって興味深く感じられた分野があれば、各章の最後にある参考文献などを利用して、さらに学びを深めていただければと思う。

引用元:森津太子、向田久美子『心理学概論(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

実は、どの大学にある心理学科も、本科目のような導入科目が設けられていることが多いです。これは、心理学のカバー領域が極めて多岐にわたることが理由の一つといえるでしょう。心理学を学び始めた学生は心理学概論を通して全体像をつかみながら、自分の専門領域を深めるための準備を始めていくのです。

最新の知見を紹介

先に紹介したとおり、本記事の筆者である私は過去に4年制大学で心理学を学んでいました。当時から10年以上が経ち、放送大学に入学して心理学を再び学び直しているわけですが、本書の知見はその空白期間を埋めるに充分な知見を提供してくれています。

たとえば、社会心理学で世間的にもよく知られている実験にスタンレー・ミルグラムによる「権威への服従」実験があります。この実験は、教師役となった実験参加者が生徒役(サクラ)の記憶力をテストし、誤答の場合に電気ショックの罰を与えるというものです。

以下のサイトにて、その実験内容と結果が分かりやすく紹介されています。

電気ショックの強さは全部で30段階あり、生徒役が解答を間違える度にそのレベルが1段階ずつ上がっていきます。最高レベルの450ボルトには、非常に危険であることをイメージさせることばさえ書かれています。そして、仮に教師役が電気ショックの罰を与えることを躊躇したときは、教師役の背後にいる実験者が「続けてください」と促す…という流れです。

果たして、教師役である実験参加者はどのレベルまで電気ショックを与えるのだろうか?というのが気になるところですよね。

その結果は、以下のようにショッキングなものでした。

 結果を見てみよう。この実験には、さまざまな年齢や職業の実験参加者が40名参加したが、そのうち25名(全体の62.5%)が、最高強度の電気ショック、すなわち、「危険」を通り越し、もはやどれくらい危険なのかが予測不能なレベルまで電気ショックを与え続けた。これは一般の人はもとより、専門家の予測さえも裏切るものであった。

(中略)特にミルグラムが行った権威への服従実験は、自分にそのような意図がなかったとしても、状況次第では、罪のない他者を死に至らしめてしまうかもしれないという恐怖を感じさせるものである(後略)

引用元:森津太子、向田久美子『心理学概論(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

…と、ここまでは「権威への服従」実験の結果としてよく知られている内容ではあるのですが、なんと近年、別の解釈が出てきたというのです(Haslam, et al., 2016)。

 そこでは、実験参加者は、実験者の命令にただ盲目的に服従して電気ショックを流し続けたのではなく、むしろ自らの意思で電気ショックを流し続けた可能性が検討されている。

引用元:森津太子、向田久美子『心理学概論(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)
わたし
わたし

えぇーッ( ゚Д゚)!!

これはビックリ…!!

こちらの解釈が報告されたのは2016年。2016年というと直近10年以内の研究であり、私が大学を卒業してから数年後の研究報告となります。このように、よく知られた実験においてもその学問的検証が継続しており、さらなる研究が報告されているのは面白いものです。

心理学を修めたのは、はるか遠い昔…という方には、知識のアップデートに最適な一冊かと思います。2024年には、本科目の改訂版が発売予定となっています。もしかしたら、今回ご紹介した2018年版以降に発表された新たな研究成果に触れることができるかもしれませんね!

関連書籍

  • 鹿取廣人、杉本敏夫、鳥居修晃、河内十郎(編)『心理学 第5版補訂版』(東京大学出版会):かつて4年制大学に通っていたときに、旧版(第2版)を購入しました。今でも版を重ねてよく読まれているようです。心理学科生の入門書とも呼べる一冊。

  • 三浦麻子『心理学研究法(放送大学教材)』(放送大学教育振興会):心理学という言葉を聞くとカウンセリングやセラピーを思い浮かべる方も少なくないと思いますが、学問としては実験や調査といった研究あってこそ。実務だけでなく研究も行いたいなら、研究法をしっかり理解しておきましょう。記事を書きましたので、宜しければお読みください。

  • 清水裕士『心理学統計法(放送大学教材)』(放送大学教育振興会):心理学を学ぶ学生が頭を抱える統計学。実は理系の要素も多い学問なのです。心理統計の解説書はたくさん出版されていますが、放送大学生はこちらをぜひ受講しましょう。記事を書きましたので、宜しければお読みください。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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