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【書評】学術的な文章を書きたくなる!放送大学教材の「日本語アカデミックライティング」を読む

【書評】滝浦真人(編著)『日本語アカデミックライティング〔改訂版〕(放送大学教材)』(放送大学教育振興会) 書評

新書を読んでいて、著者の主張に大いに納得した経験はありますか?

ビジネス書を含む実用書から業務に役立つ知識を得ながら、本の書き手が巡らす論理展開に感嘆することは少なくありません。読書体験というのは、そこに記述された内容からだけでなく、文章のつながりや全体の論理展開の流れから学びを得ることが多いものです。

今回は、論文執筆を目指す学生や、学術的な研究の作法を学びたい方にオススメの一冊をご紹介します。それは、放送大学で開講されている講座「日本語アカデミックライティング('22)」のテキストです。

講義は放送大学生しか視聴できませんが、書籍は全国の書店などで購入できます。本記事では、本書の概要をお伝えいたします!

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本講座の基本情報

本講座「日本語アカデミックライティング('22)」は、放送大学で開講されている科目です。

  • 2022年度開設(初代科目は2017年開設)
  • 放送授業(インターネット配信のみ)による講義 ※放送大学生のみが視聴可能
  • 基盤科目の「日本語科目」群3科目のうち、最上位の科目

具体的なシラバスはこちらからご参照ください。

放送授業は放送大学生だけが視聴可能なインターネット配信にて公開されていますが、書籍はAmazonほか、各書店でお買い求めいただけます。各地域におけるテキスト取扱書店は下記をご参照ください。

こんな方にオススメ

  • 放送大学に入学したばかりだが、ゆくゆくは学術的な研究をしたい方
  • 卒業論文を執筆したいと考えている学生
  • さまざまな分野における論文執筆の作法を学びたい方

目次

本書の目次は下記のとおりです。全15回の放送授業に沿った章立てとなっております。

 1 アカデミック・ライティングの基礎①:何のために書くか?
 2 アカデミック・ライティングの基礎②:目指したい文章
 3 学問分野と文章①:生活研究とライティング
 4 アカデミック・ライティングの基礎③:研究の目的とタイトル
 5 アカデミック・ライティングの基礎④:問題意識と観点の整理
 6 学術情報と情報管理①:学術情報の入手
 7 学術情報と情報管理②:リファレンス作成法
 8 調査法とデータ①:論拠としての調査
 9 調査法とデータ②:データの分析と結果の示し方
10 アカデミック・ライティングの基礎⑤:パラグラフで書く
11 アカデミック・ライティングの基礎⑥:文を書く・自己添削する
12 学問分野と文章②:自然科学を書く
13 学問分野と文章③:社会科学を書く
14 学問分野と文章④:人文学を書く
15 研究のあり方:学術研究における研究倫理

さまざまな分野の講師陣による講義

本科目の主任講師は滝浦真人先生(言語学・語用論・イン/ポライトネス論・日本語学)。

テキスト執筆は滝浦先生のほか、奈良由美子先生(リスクマネジメント学/リスクコミュニケーション論)、辰己丈夫先生(情報学/情報教育/情報倫理)、森津太子先生(社会心理学/社会的認知)、安池智一先生(化学/理論分子科学)、松原隆一郎先生(社会経済学/経済思想)、野崎歓先生(フランス文学 翻訳論 映画論/文学・言語文化/翻訳論/映画論)といった総勢7名の講師が担当しています。

放送授業では、滝浦先生に加えて各分野の先生方が登場し、穏やかな空気のなか、アカデミック・ライティングを題材に軽妙なトークが繰り広げられます。これがとても楽しく面白いのです!ときに先生方のプライベートに関する話題に話が及ぶことがあり、そこにはテレビを見ているかのような楽しさが。それにも関わらず、内容は専門的で深い

四年生大学を卒業した後、だいぶ日が経ってから放送大学に入学したばかりの私にとっては、カジュアルな雰囲気のなかで学びの楽しさを再発見するきっかけを得る講座となりました。特に、放送大学に入学して日が浅い方にオススメの講座です。

ただ、論文執筆経験がない方は滝浦先生の基盤科目「日本語リテラシー('21)」「日本語リテラシー演習('18)」から受講を始めるとよいかと思います。私は学生時代に卒業論文を執筆したことがあるので、「日本語科目」群の最上位科目である「日本語アカデミックライティング('22)」を受講することにしました。

さまざまな分野における論文執筆の作法を学べる

目次に示されているとおり、本講座では日本語論文におけるアカデミックライティングの基礎を学べるほか、自分が専攻している分野以外の領域における論文の作法を知ることができます。

たとえば、リファレンスの書き方について。

どのスタイルを利用するかは、それぞれの論文誌等の規定に従うことになる。北海道大学の「アカデミックスキルガイド」に、わかりやすく書かれている。

APAスタイル アメリカ心理学会
MLAスタイル アメリカ現代言語協会
IEEEスタイル アメリカ電気・電子技術者協会
NLMスタイル アメリカ国立医学図書館
ACSスタイル アメリカ化学会
シカゴスタイル シカゴ大学出版会
SIST02 日本の科学技術振興機構(JST)

引用元:滝浦真人(編著)『日本語アカデミックライティング〔改訂版〕(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)
わたし
わたし

えー!こんなにあるのー!!と大変驚きました…。

私は心理学を専攻していたので、APAスタイルこそが論文の基本だよね、と考えていました。

今回、リファレンスの示し方にはさまざまな形式があるということを知って、「もしかして、専攻分野が異なる同僚が執筆した文章を読んだときに違和感を感じたりするのは、この執筆作法の違いによるものなのかも…?」なんて思い至った次第です。

他にも、自然科学の分野ではTEXというツールを使って数式を記述することが多いとのこと。

 以上見てきたように、自然科学分野の論文には、論理構造に基づいた構造化、図表や数式の多用といった特徴がある。このような特徴を持つ文章を効率よく書くためのツールとしてTEXがある。

引用元:滝浦真人(編著)『日本語アカデミックライティング〔改訂版〕(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

「そういえば、高校時代の教科書には数式がたくさん並んでいたけれど、このTEXというツールを使って美しく示されていたのかな…」なんて考えました。

私は現在、システム開発の職に就いておりますが、過去に関わった仕事でこうした数式が仕様書に書かれていることもありました。日常業務においてTEXを使う機会があるかもしれない、と考えたらなんだかワクワクしてしまいますね。

放送授業を視聴していた時間も大変有益でしたが、テキストの予習・復習に費やした時間も大変有意義でした。本記事が、放送大学生の方で受講を迷っている方の参考になりましたら嬉しいです。また、現在放送大学生でなくても、放送大学のテキストを手に取るきっかけになりましたら、とても嬉しいです!

関連書籍

  • 滝浦真人『日本語リテラシー〔改訂版〕(放送大学教材)』(放送大学教育振興会):今回ご紹介した『日本語アカデミックライティング〔改訂版〕(放送大学教材)』よりも基礎的な位置づけの講座で使用されているテキストです。

  • 齋藤早苗『社会人のための文系大学院の学び方』(青弓社):大学院レベルの論文を作成するなら、こちらの書籍もオススメです。以下記事にて紹介していますので、宜しければご参照ください。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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