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【書評】歴史を振り返り、現代の貧困を考える。放送大学教材の「貧困の諸相」を読む

【書評】駒村康平、渡辺久里子『貧困の諸相 (放送大学教材)』(放送大学教育振興会) 書評

コロナ禍のあいだ、どんなことを考えましたか?

仕事では在宅勤務のオンラインミーティングが拡大し、多くの企業で少しずつ浸透してきましたよね。社会的には、老舗の廃業や無差別殺傷事件の報道が思い出されます。

私は、コロナ禍開始3年目の2022年、祖父が施設に入居したり父が介護状態に陥ったこともあって、社会福祉に大きな興味関心を抱いていました。そんな経緯で手に取り始めたのがNHKの社会福祉セミナーという月刊誌です。ラジオ放送に耳を傾けながら毎月約800円のテキストで学ぶ社会福祉の世界は、私の視野を大きく広げてくれました。

とりわけ興味深く話を聞いていたのが、駒村康平先生の社会保障制度についての講義(2022年9月放送)です。穏やかな口調で話される内容は、恥ずかしながら私にとっては知らないことだらけで、自分の無知を自覚するとともに大変勉強になりました。

そして、私は2023年に放送大学に入学した後、再び駒村康平先生のお名前を目にすることになります。履修科目を選ぶため授業科目の一覧を眺めていたところ、そこに駒村康平先生のお名前が!そんな出会いから履修した科目のテキストが、本日紹介する一冊です。

今回は、社会政策の観点から貧困について理解を深めたいと考えている方へ、放送大学でぜひ受講していただきたい「貧困の諸相('23)」の印刷教材(テキスト)をご紹介します。

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本講座の基本情報

本講座「貧困の諸相」は、放送大学で開講されている科目です。

  • 2023年度開設
  • 放送授業(ラジオ配信)
  • 生活と福祉コースの導入科目

具体的なシラバスはこちらからご参照ください。

放送授業はラジオで公開されており、書籍はAmazonほか各書店でお買い求めいただけます。各地域におけるテキスト取扱書店は下記をご参照ください。

こんな方にオススメ

  • 貧困・格差の拡大に興味関心がある
  • お金をかけずに本格的な知識を得たい
  • 生活保護などの社会保障制度を理解したい

目次

本書の目次は下記のとおりです。全15回の放送授業に沿った章立てとなっております。

 1 はじめにー貧困を考える
 2 貧困と救済の歴史ー貧困対策の変容
 3 近代日本の貧困
 4 現代日本の貧困と社会保障制度
 5 欧州と世界の貧困史ー古代から現代の貧困政策
 6 貧困の測定
 7 日本における貧困
 8 貧困の国際比較
 9 貧困問題に対する社会保障(1)ー生活保護制度の役割と課題
10 貧困問題に対する社会保障(2)ー生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の未来
11 SDGsと貧困の撲滅
12 新型コロナと貧困ー明らかになった生活保護の限界と包括的な最低所得保障制度の必要性
13 子どもの貧困と貧困の世代間連鎖(1)ー成育環境を通じた影響と諸外国の政策
14 子どもの貧困と貧困の世代間連鎖(2)ー日本における貧困の世代間連鎖とその対策
15 環境、貧困そして幸福

日本・海外の貧困の歴史を俯瞰

現代において「貧困の解消」というと、SDGsの文脈から「すべての人が人間らしい生き方をできるようにすべきだ」という人権尊重の意味合いで語られることが多いのではないでしょうか。

しかし、人権という概念が生まれたのはたかだか数百年前のことです。人類の歴史において貧困救済というのは、あくまで治安維持が目的となっていました

(中略)古代ギリシャの哲学者アリストテレスは「貧困は革命と犯罪の親である」という言葉を残している。政府がなんら貧困の救済、解決をしないで、治安の乱れ、犯罪を放置すると、社会不安は際限なく広がって行った。為政者・支配者にとっては、貧困の放置、そして浮浪は社会秩序を乱す要因であり、その範囲での貧困への対応が必要となった。

引用元:駒村康平、渡辺久里子『貧困の諸相(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

第2章から第5章では、日本や海外における過去の諸制度が紹介されていきます。私は高校時代に世界史を選択したため、日本史における貧困対策についてまったく知らず、大変勉強になりました。逆に、高校で日本史を選択した方は欧州の貧困史に触れることで新たな学びになるかもしれませんね。

渡辺久里子先生の講義も素敵!

駒村康平先生のお名前に興味を抱いて履修したこの科目は、駒村康平先生と渡辺久里子先生の共同執筆となっています。渡辺久里子先生の担当する第6章から第8章では貧困測定の方法や相対的貧困率の国際比較としていきます。

放送大学では印刷教材(テキスト)だけでなく放送授業(テレビ放送やラジオ放送)があるのですが、本科目のラジオ放送で耳にする渡辺久里子先生のお話がとても素敵なのです。

ハキハキした話し方は、自分が仕事でプレゼンをする際に参考になる点ばかりですし、貧困問題を解消する魔法のような手段が無いという言及には、研究者自身もジレンマを抱えながら社会課題の解決に取り組んでいるのだな、と考えさせられることが多かったです。

(中略)誰一人取り残さない、持続可能な社会を実現するにあたって、「これをすれば」という魔法のような方法はない。どのような方法が望ましいのか一人一人が考え、そして議論を続けていくことが大切となる。

引用元:駒村康平、渡辺久里子『貧困の諸相(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

最近の重要テーマをふんだんに盛り込む一冊

本科目は2023年度に開講され、ウィズコロナ時代に世に出されました。新型コロナウィルス感染症の蔓延を契機として社会的に大きな変化が訪れたのは、多くの方の実感するところではないかと思います。こうした直近数年における変化を貧困問題における重要テーマとして捉え、本書にふんだんに盛り込んでいる点は、本書を最もオススメする理由の一つです。

実際、目次を眺めてみても第11章から第15章まで「SDGs」「新型コロナ」「子どもの貧困」「世代間連鎖」「環境」とホットな話題ばかりです。これまで貧困問題をあまりよく知らなかった方であっても、どこかで耳にしたことのあるこれらの言葉をきっかけに、興味を持って読み進められることでしょう。

関連書籍

  • ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP):こちらの書籍で、絶対的貧困率(極度の貧困にある人)の話題があります。別記事でも紹介していますので、宜しければお読みください。

  • 『NHK 社会福祉セミナー』(NHK出版):6ヶ月間の放送内容を一冊にまとめたテキストです。内容は毎年更新されるようで、福祉の領域に関心がある方は視聴すると大きな学びになるかと思います。

  • 駒村康平(編著)『社会のしんがり』(新泉社):2014年度から2018年度の5年間にわたって行われた慶應義塾大学経済学部の全労済協会の寄附講座「生活保障の再構築――自ら選択する社会福祉」から、11人の講義を選び編集したもの。駒村康平先生の書籍でこちらも読んでみたいなと思っています。

  • 西澤晃彦『人間にとって貧困とは何か(放送大学教材)』(放送大学教育振興会):すでに閉講してしまいましたが、神講座との呼び声も高かった本書。分かりやすいと評判なので、まずはこちらから手に取ってみるのが良いかもしれません。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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