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【書評】ボランティア活動はいかが?「共に育つ“学生×大学×地域”」を読む

【書評】聖学院大学ボランティア活動支援センター(編集)『共に育つ“学生×大学×地域”――人生に響くボランティアコーディネーション』(聖学院大学出版会) 書評

コロナ禍の間は人と人との接触が制限され、対面でのコミュニケーションに大きな工夫を求められる場面が多々ありました。特に、ボランティア活動は最も影響を受けた活動の一つであり、感染予防のために子どもやお年寄りへのサポートが自由にできなくなってしまいました。

今回は、そんな社会的混乱が続いていた2022年、設立10周年を迎えた聖学院大学ボランティア活動支援センターの取り組みを述べた『共に育つ”学生×大学×地域”』をご紹介します。

新型コロナウィルスも5類に移行し、なにか新しいことを始めた方も多いのではないでしょうか?まだの方は、ボランティア活動がその候補の一つになるかもしれませんよ!

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こんな方にオススメ

  • ボランティア活動をしてみたいと思っている方
  • なにか新しいことを始めたい方
  • 社会貢献に興味がある方
  • ボランティア運営団体の活動を知りたい方

聖学院大学とは

本書は、聖学院大学におけるボランティアセンター(以降、ボラセン)の活動をまとめたものです。さて、聖学院大学とそのボラセンの成り立ちについて、少しまとめてみましょう。

  • 聖学院大学は1988年に創設(前身は聖学院女子短期大学)
  • キリスト教精神に基づいた教育を行っている
  • 2000年にボランティア部会(学生運営によるボラセンに該当する活動)を設置
  • 2011年にボランティア活動支援センターを開設

大学名に「聖」と付くことからも分かるように、聖学院大学はキリスト教の教えを基礎とした大学組織です。

そして、ボラセンに関する組織の正式立ち上げには、日本の大災害が関連しています。阪神・淡路大震災(1998年)、東日本大震災(2011年)といった震災を機に、日本全体でボランティア熱が高まったことは記憶に新しいことと思います。

前任の学長は、姜尚中氏(任期:2013年4月~2015年3月)。メディアにもよく登場していたので、ご存じの方も多いことでしょう。

ボランティア活動のきっかけ

皆さんの通っている大学、あるいは通っていた大学にボラセンはありましたか?私の大学にはありました。私自身は訪れたことはなかったのですが、熱心に活動している友人は何人かいました。

さて、ボランティアって何のためにやるのでしょう?社会貢献のため?

本書でも引用されている公益財団法人日本財団学生ボランティアセンター(現日本財団ボランティアセンター)が2017年に大学生1万人を対象に行ったアンケートの結果は以下のとおりでした。

引用元:日本財団ボランティアセンター>調査報告>「全国学生1万人アンケート ~ボランティアに関する意識調査2017~

ボランティアという言葉からイメージされる「社会貢献」の観点でボランティアを始める学生は、実は1割を切っています。一方で、「自己実現・自分自身のため」という理由の学生が約3割という点も興味深いですよね。

そういえば、学生時代の友人とこんなやりとりがあったことを思い出します。

友人
友人

ねーねー!ボランティアやらない?

わたし
わたし

ごめん、今はちょっと無理かも。

ちょっとサークルが忙しくなってきたんだよね…。

友人
友人

そっか~。もし興味があったら教えてね!

実は、ボランティアって皆が思っているよりもずっと楽しい活動なんだよ。

わたし
わたし

…楽しい…??

社会人になってからボランティア活動を始めた私にとって、当時の友人の言葉はとてもよく理解できます。実は「ボランティア=誰かのために無償で活動する」ということではないように思うのです。

ボランティア活動の二面性と葛藤

当時の友人の考え、そして現在の私のボランティアに対する認識を明確にするヒントが、第Ⅱ章「学生ボランティアの可能性」の1.2節「ボランティア活動を通した学びと成長はなぜ起きるのか?」にありました。ここでは、ボランティアを通して学生自身の学びと成長が生じる要因が挙げられています。

とても肚落ちする説明であり、ボランティアの本質に迫る内容でしたので、少し長いですがそのまま引用させていただきます。

 5つ目はボランティアがもっている二面性の構造とその二面性から必然的に生じる葛藤です。ボランティアとは何かを考えるとき、「自発性」「社会性」「無償性」というボランティアの3原則と呼ばれる特徴があげられます。しかし、これらの原則は実は時代とともにそのあり方が揺らいできました。それだけではなく、そもそもこの原則は二面性をはらんだものだと考えられます。

 まず「自発性」の二面性について考えてみたいと思います。本書でも触れてきましたが、自らの意志で取り組むのがボランティア活動だとされていますが、実際の学生の活動のきっかけをみると、友人や先生からの声がけなど、受動的な理由で活動に関わり始めることもあるのが現実です。また、そもそもボランティア活動は、「活動をしたい人」だけでは成立しておらず、活動を求める人や社会からの要請を前提にしています。そういう意味では、活動自体求められなければ始められないという受動的要因によって成立していることがわかります。「社会性」の二面性においても、「自己実現・自分自身のため」に活動を始める学生が多いことを紹介しましたが、本来「他者や社会のための活動」とされているボランティア活動に、自分の成長や自己実現のために参加するという二面性が存在しています。さらに「無償性」の二面性については、「有償ボランティア」という言葉が存在しており、そもそもの原則自体も揺らいでいます。

 これら二面性を抱えたボランティア活動に関わると、必然的に葛藤を抱えることになります。しかし、この二面性と葛藤があるからこそ学生の成長にもつながると考えられます。例えば、社会性で考えた場合、自分のために活動を始めた場合、困りごとを抱えている人を目の前にしたときに自分のためのボランティアでいいのかを問われます。また、他者のために役立つことを目指して始めたとしても、活動を通して自分自身が多くのものを与えられていることに気づくでしょう。これらの葛藤を抱えつつ活動を継続することで結果的に、「自分のためであり、かつ他者のためでもある」「他者のために行うこと、結果自分のためにもなる」等、新しい視点を獲得していくことにもつながっていきます。

引用元:聖学院大学ボランティア活動支援センター(編集)『共に育つ“学生×大学×地域”――人生に響くボランティアコーディネーション』(聖学院大学出版会)

ボランティアのきっかけが自分のためであれ、他の方のためであれ、人と人との関わりを通して社会は繋がっているということなのでしょう。そうして考えてみると、本書タイトルの「学生×大学×地域」というかけ算が生み出す効果というものの醍醐味も見えてくるような気がします。

長期休暇や新生活を始める際に、ボランティア活動に取り組んでみるのはいかが?

関連書籍

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最後までお読みいただき有り難うございました!


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