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【書評】読むのが遅くても「1%」を拾えればいい。「遅読家のための読書術」を読む

【書評】印南敦史『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社) 書評

この書評ブログをお読みの方は、きっと読書や勉強が好きな方が多いことでしょう。もしかしたら、「自分が読んだ本について、誰かの感想が知りたいなぁ」という目的で訪問なさる方もいるかもしれませんね。

私は、当ブログで100本以上の書評記事を執筆しました。しかし、若かりし頃を振り返ると、決して「読書家」と呼べるような学生ではありませんでした。実は、中学生から大学生の頃には、1年にせいぜい1冊程度しか本を読んだ記憶がありません。

なぜ読書習慣が無かったのかについてはいろいろ要因は考えられるのですが、テレビといった誘惑や授業の予習・復習負荷(進学校に通っていました)が挙げられると思います。加えて、単純に「読むスピードが遅かったから」というのもあります。

文字を追うスピードがあまりにも遅く、マンガでさえ1冊あたり1時間以上を要していた記憶があります。これには、状況を思い浮かべて空想の世界に浸る時間が含まれていましたが、友人からマンガを借りても返すまでに時間がかかってしまう…という罪悪感が常にありました。

このように、読書スピードがかなり遅い私ではありましたが、社会人になってからは読書習慣が身につきました。私が実践した習慣化のコツについては以下の記事を参考にしていただければと思いますが、私のように、読書スピードが遅いことに悩んでいる方はきっと少なくないことと思います。

今回ご紹介するのは、「読むのが遅い」と悩むあなたにヒントを与えてくれる、『遅読家のための読書術』。一般的に読書術の本は、「もともと読書習慣がある読書家が、さらに大量の本を速く読むためのテクニック」を指南する印象があります。本を読むのが遅い人は、こうした上級者向けの読書術に触れることで、読書にますます敷居の高さを感じてしまったりするのですよね。

その点、この本は著者も「遅読家」であることを告白している点に親しみを感じます。そして驚くのは、そんな著者がなんと年700本の書評記事を執筆しているということ。さっそく本書の中身をみていきましょう!

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こんな方にオススメ

  • 本を読むスピードは遅いけれど、多くの本に出会いたい
  • 読書を習慣化したい
  • 学びを積み上げていきたい
  • 読了後の書籍管理術が知りたい

遅読家による遅読家のための読書術

先ほど述べたとおり、著者は自身がかなりの「遅読家」だといいます。

「本が大好き。読みたい本がたくさんあるけど、読書時間が全然とれない……」
「仕事で読まないといけない本があるのに、私の読書スピード、遅すぎ……」
「読書量がめっきり減った。『今日こそ読むぞ』と思ったけど、もう眠い……」

自分は本を読むのが遅い」と感じている人って、かなり多いみたいですね。
 いわゆる「速読本」が次から次へと出てくるのも、それだけ多くの人が「読書スピード」に悩んでいるからなのでしょう。

 僕自身もずっとそのことで悩んできたので、気持ちはものすごくよくわかります。
(中略)
 ちょっと試しに、手元にあった翻訳もののビジネス書で計測してみたところ、1ページを読むのにだいたい5分弱かかりました
 ボーッとしながら読んでいると、10分近く過ぎていることもあります。

 最後の行を読み終えたあたりで、「(あれ? この10行くらいの記憶がまったくないぞ)」と気づいて読み返したり、「(いや、その前から全然、頭に入っていないな……)」と思い直して前のページまで戻ったり……。

 放っておくとそんなことばかり繰り返しています。

 あまり認めたくはないんですが、本当に「驚くべき遅さ」なのです(みなさんのほうが、もう少し速いかも……)

引用元:印南敦史『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)
わたし
わたし

なんと…私と一緒!!

以下の章立てで、本書は展開されていきます。話し言葉で記述されているので、ビジネス書や学術書と違ってスラスラ読み進めていくことができます。冒頭から読み進めるのをオススメしますが、興味を持った章だけピックアップして読むのも良いでしょう。

はじめに なぜ「1ページ5分」の遅読家が年700本の書評家になれたのか?
第1章  なぜ読むのが遅いのか?    ーーフロー・リーディングの考え方
第2章  なぜ読む時間がないのか?   ーー月20冊の読書習慣をつくる方法
第3章  なぜ読んでも忘れるのか?   ーー読書体験をストックする極意
第4章  流し読みにもルールがある   ーー要点を逃さない「サーチ読書法」
第5章  本とどう出会い、どう別れるか ーー700冊の選書・管理術
終章   多読家になって見えてきたこと
おわりに 10年後には「7000冊の世界」が待っている

1%に出会う

読書スピードが遅い方のなかには、無意識の完璧主義が隠れているのではないかと思います。「一言一句漏らさず理解しよう」とか、「書かれた内容はすべて身につけよう」とか。

が、一冊の本から1%のエッセンスが得られれば良いと著者は言いきります。

 ここからもわかるとおり、読書の本当の価値は、書かれていることの「100%を写しとる」ことではなく、価値を感じられるような「1%に出会う」ことにあります。

引用元:印南敦史『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)

この記述を読んで思い出したのは、『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)という小説。この作品は、第二次世界大戦下における独ソ戦を背景に物語を展開し、単なる戦争小説と表現することが憚られるほどにさまざまなテーマを含んでいます。

私は小説を読みながら、登場人物たちの心境を想像したりと大変心を揺さぶられ、どっぷりとその世界感にハマりました。そして、この本を誰かにオススメするとしたら何を話そうかと考えたときに、私は物語のなかで出会った「1%」のことを抽出して語るだろうなと思ったのです。

その1%とは、小説のタイトルにもある『同志少女よ、敵を撃て。』という一行が登場するシーンです。おそらく、この一行は他のすべての展開を忘れ去ってしまったとしても、生涯記憶に残り続けるだろうと思ったのです。それほどまでにインパクトのある1%に出会えたことが、この読書体験の果実でした。

↓『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)の書評記事はこちら

読書は呼吸である

「本が読めなくなった」「遅読家になった」という人への解として、著者は次のように述べていました。

 ではどうすればいいかというと、答えはシンプル。吸いすぎて苦しいのであれば、息を吐けばいい。それと同じで、ひたすら「読む」だけでなく「書く」ようにする。ただ読むだけじゃなく、「書くために読む」ことへと意識を変えるわけです。

 本を読むことを大げさに考え、「熟読の呪縛」にとらわれている人は、「たった1回きりの読書で、本の中身を頭の中にコピーしてやろう」というずいぶんと欲張りな考え方をしています。

引用元:印南敦史『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)

私は、読書中の本については小説・ビジネス書といったジャンルを問わず、適宜メモを取りながら読み進めています。このような習慣が身についたのは、実は『メモの魔力』という本を読んだからです。

そして、このメモを読み返しながら書評記事を作成しています。私はとっても忘れっぽい人間なので、メモを読む→思い出す→考えをまとめ直す、という作業が読書体験をさらに深めてくれて助かっています。

↓『メモの魔力』(幻冬舎)の書評記事はこちら

アウトプットとして読書内容を「書く」ことに挑戦してみたい方は、まずは本書『遅読家のための読書術』で推奨されている「1ライン・サンプリング(気になった部分をA4用紙になるべく短く書き写す)」がオススメです。

インプットとアウトプット、すなわち「読む(吸う)」「書く(吐く)」という自然な呼吸ができることで読書のサイクルが回っていくという考え方には、大いに共感しました。

本や知識は「ストック(貯蔵)」ではなく「フロー(流動)」で

最後に、私がここ数年取り組んでいる実家の片づけとの共通点を紹介しておきます。

呼吸のように「読む」「書く」という行為には、「吸う」「吐く」という呼吸の考え方から、どこか円環的なつながりが感じられます。一方、「読む」という行為だけならば「吸う」ばかりなので、一方向的であるといえそうです。前者は「フロー(流動)」型、後者は「ストック型(貯蔵)」と言い換えることができるでしょう。

重要なのは、何を残し、何を手放すかだと語られていました。

 本についても知識についても、本当に手元に置いておくべきものだけを残し、それ以外はため込まないことがあたり前になりつつあるのです。
 これはつまり、必要なものと不要なものとを分ける「取捨選択」がとても重要な意味を持つということ。それが現代であり、だからこそ読者も、本を読むときには「必要なところ」だけを読むべきなのです。

引用元:印南敦史『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)

片づけという行為は、常に選択の連続です。自分の今後の人生にとって必要なものは残したり新たに入手し、不要なものは捨てたり他人に譲る、という行動を繰り返すのです。

私の祖父は、数千冊の本を自宅に遺したまま他界しました。蔵書を眺めていると、祖父自身の興味・関心・思考がかなり明確に伝わってくるという良さがあるものの、処分に悩んでいることも事実です。

もちろん、祖父が買い集めた蔵書のいくつかは本棚には収まりきらず、床にたくさん書籍が積み上げられていました。祖父はすでに他界しましたが、高齢になるにつれてこうした積ん読本につまづいて骨折などの大ケガをする可能性が高まってゆくことは、想像に難くありません。

「本を処分する」ということに、ネガティブなイメージを持っている人も多いと思いますが、人生を豊かにしてくれるはずの本が、生活環境をどんどん悪化させていくなんて本末転倒です。ストック(貯蔵)をやめてフロー(流動)に切り替えることは、「本の読み方」だけでなく、「本の管理」についてもいえることなのです。

引用元:印南敦史『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)

いったん読書習慣が身につくと、大量の本が手元に保管されていきます。読み方を「フロー(流動)」型に変えていくことで、物理的にも「ストック(貯蔵)」を減らしていく。これは、すべての読書家の方にオススメしたい習慣です。

関連書籍

  • 逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房):第二次世界大戦における独ソ戦を舞台に、ソ連の女性狙撃手から見た戦争を臨場感ある筆致で書き上げた小説です。第11回アガサ・クリスティー賞大賞、2022年本屋大賞を受賞しました。記事を書きましたので、宜しければお読みください。

  • 前田裕二『メモの魔力』(幻冬舎):メモを習慣化することで、自分の人生を切り開いていく。仮想ライブ空間を提供する株式会社SHOWROOMの創業者による大ベストセラーです。記事を書きましたので、宜しければお読みください。

  • 三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社):20代から30代の会社員に爆売れしたという本書。新書は一般的に高齢層に売れる傾向があると言われますが、若い世代に受けたということで「働きながら本が読めない」という悩みは全世代共通の悩みなのだなと考えさせられます。

  • 樺沢紫苑『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版):精神科医がお届けする、アウトプット術80連発! なかなか時間が自由に作りにくい社会人にとって、仕事をしながら勉強するのは結構大変なことです。科学的に裏付けされている方法の紹介もあり、タメになります。資格試験や語学の勉強が捗らない方にオススメ。ほとんどが見開き2ページ分で収まる文章量で項目を分けており、イラスト付きなので、普段本を読まない方にも読みやすいと思います。

  • 樺沢紫苑『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版):アウトプット大全と併せて読みたい良書。アウトプットも重要ですが、最大のインプット効果をもたらす手法をまずは押さえておきたいところ。見開き2ページで1テーマなので、隙間時間に読みやすいのもオススメポイントです。新しいことを始める前に読むと効果倍増ですよ。

  • 読書猿『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』(ダイヤモンド社):独学者のバイブルとして手元に置いておきたい一冊。本サイトでも別記事で紹介していますので、宜しければ併せてご参照ください。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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