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【書評】若者が全員投票しても65歳以上の票数には及ばない!?「未来のドリル」を読む

【書評】河合雅司『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』(講談社) 書評

新型コロナウィルスの流行によって日本の経済、働き方、ライフスタイルなどが一変してしまいました。日本で見られた風潮として、「自粛警察」に代表されるような同調圧力に息苦しさを覚えた方も多いのでは無いでしょうか?

自粛警察の事例を通して思うのは、いま感じている変化は「コロナ禍によって変わってしまったもの」なのか、それとも「今まで表面化していなかったものがコロナ禍を契機に露呈したもの」なのか、どちらなのだろうか?ということでしょう。

今回ご紹介する「未来のドリル」は、ベストセラー「未来の年表」シリーズの最新作で、新型コロナウィルスが我々に突きつけた、従来からの日本の課題を述べた1冊です。

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こんな方にオススメ

  • 少子高齢化問題に関心がある方
  • 日本の未来を憂慮している方
  • コロナ禍で起きた変化を客観的指標を元に考えたい方

独特な目次

本書では第1部「人口減少ドリル」、第2部「日本を守る「切り札5カ条」」の2部構成を取っています。目次を見たときにまず引きつけられるのが、第1部の目次。なんと、こちらは書名にもあるとおり、ドリル形式になっているのです!

たとえば、次のような形です。

問題4 24時間営業が限界なのは、□□まで□□□いられない消費者が増えていくから
Ⓐ深夜 起きて Ⓑ店舗 通って ©閉店 待って

ここでは選択問題を挙げましたが、ほかには漢字問題や数値穴埋め問題も。

さんごうつ」が2倍以上に増えた
高齢者の「パック旅行費」は前年より約□%減 【Ⓐ55 Ⓑ75 ©95】

解答は本書を読むことで分かるのですが、この目次を読んだだけでも興味を引かれてしまいますよね。

東京のオフィスの空室率が上昇し続けている

ここからは、私が特に驚き関心を持って読み進めた箇所についてご紹介します。まずは、東京圏のオフィス空室率について。

 東京ビジネス地区の空室率の上昇傾向は2021年に入っても続いており、三鬼商事によれば、2021年3月は5.42%に上る。港区に至っては7.30%である。

 一般に、空室率が5%を超すと賃料の値下げ圧力がかかり始める。いわゆる「5%の壁」だが、2021年3月時点では都心5区のすべてで平均賃料の下落が確認できる。

 東京で新築ビルの建設が増えたのは、コロナ前にはオフィス不足が深刻化していたからである。アベノミクスを背景とした大企業の伸びもあって、空室率は2015年頃から下がっていた。新型コロナウィルス感染症が拡大する直前の2020年2月には1.49%という極めて低い水準にまで下がっていた。

引用元:河合雅司『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』(講談社)

新型コロナウィルスが猛威を振るっていた時期は、私自身、東京に本社がある会社に勤めながらも、感染症対策の一環として8割がたテレワークで働いていました。

社内には「対面での会話こそがコミュニケーションだ!」という方がいる一方、オフィス不要論を掲げる方もいました。私自身はどちらかというと、当時も今も後者の考えを持っています。したがって、IT系やベンチャー企業などが、東京のお高いオフィスから撤退したり規模を縮小したりしたという事実には、かなり納得できるものがあるのです。

そこで、「本書で記載されている2021年3月からさらに1年経った、2022年3月はどんな状況だろう?」と気になり、三鬼商事さんのサイトで2022年3月のオフィス空室率を実際に調べてみました。

結果は……東京ビジネス地区(千代田・中央・港・渋谷・新宿)の平均で6.37%、港区は8.33%なんと約1%も悪化しています!

わたし
わたし

え…!私の会社のオフィスも賃料安くして、

給料に転換してもらえませんかね(^◇^)…!

本書でも引用されている三鬼商事さんのサイトはこちら。国内の主要都市部のオフィスマーケット情報が確認できます。気になる方はチェックしてみてくださいね!

介護事業所の利用が減少し、事業所経営に打撃

また、介護に関する話題も特に関心を持って読みました。実は、私の祖父も最初の緊急事態宣言発出から数ヶ月後に自宅での介助が困難になり、ホームへ入居することになったのです。以降、感染症対策のため自由に面会できない状況が続き認知機能も低下、要介護5の認定を受けました。

 ”過剰な警戒心”はさらに状況を困難にしている。厚生労働省が介護事業所を対象とした調査結果(2020年7月)を公表しているが、自主的に通所介護の利用を控えた人がいた事業所は81.7%に上った。利用者本人が事業所内での感染不安を抱いたケースが68.2%、家族が不安を抱いたケースが78.2%(複数回答)であった。

 この自主的な「利用控え」が深刻なのは、介護事業所の経営に大きな打撃を与える点にある。

 東京商工リサーチによれば、2020年の「老人福祉・介護事業」の倒産は118件に達し、介護保険法が施行された2000年以降で最多件数を更新した。

(中略)

 倒産だけでなく休廃業・解散で介護事業から撤退するケースも455件(前年比15.1%増)を記録し、2018年の445件を抜いて過去最多となった。倒産と休廃業・解散を合計すると、573件もの介護事業所が姿を消したこととなる。

引用元:河合雅司『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』(講談社)

ホームからは、いつも丁寧に写真を送付いただいたり、細かな変化をお電話で伝えていただいたり、感謝の気持ちでいっぱいです。気軽には会えない状況ではありますが、祖父が穏やかに日々を過ごしていることが分かって、家族としてもとても心安らかな気持ちになるのです。

そんななか、祖父の入居するホームから値上げのお知らせがありました。人不足の業界でこれだけ丁寧なケアをしながら感染症対策を徹底するということは、やはり大変過酷なお仕事だということなのでしょう。ちょうど本書を読んでいる時期に値上げのお知らせをいただいたので、ホームに対してさらに感謝の気持ちが増したことは言うまでもありません。

以上の実体験も踏まえて、現在、歩行や外出などの活動が可能なご家族がいらっしゃるようであれば、感染症対策をしっかり行ったうえで活動することをオススメします。

20代・30代が全員投票に行っても、65歳以上の高齢者の票数には及ばない

さて、最後は第2部「日本を守る「切り札5カ条」」から選挙に関する話題を挙げましょう。若い世代よりも高齢者の方が意見がとおりやすいことを「シルバー民主主義」と呼ぶのですが、この是正策についての言及です。

 2020年時点の日本人の20代は、1186万1000人だ。対して、70代はその1.37倍の1625万2000人を数える。65歳以上の高齢者(3602万7000人)と比較したならば、3分の1程度にしかならない。

 30代の1344万7000人を加えた20代~30代の全員が投票に行ったとしても、人口規模が65歳以上人口の7割でしかないので、高齢者の票数にそもそも及ばないのだ。「シルバー民主主義」の是正という目的からすれば、「若者の投票率を向上させる」というのは、作戦として成り立っておらず、始める前から”負けゲーム”なのである。若い世代がこの冷酷な事実にどれほど気づいているかは分からないが、これでは無力感が広がり、政治に対してしらけるのも当然であろう。

引用元:河合雅司『未来のドリル コロナが見せた日本の弱点』(講談社)

そう、少子高齢化が進む日本では、若者全員が投票に行っても政治を大きく動かすことはできないということです。ロシアがウクライナ侵攻した際に、この大国に立ち向かったゼレンスキー大統領は当時44歳。現在の日本で40代以下の首相が誕生する日は来るのでしょうか?

こうした実状に対して著者の示す提言は、とても魅力的なものでした。日本の未来を担うのは若者です。是非、本書を若い方に読んでいただき、日本の未来を考えるきっかけになればと思います。

関連書籍

  • 河合雅司『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(講談社):目を背けたくなる未来の年表が描かれています。が、本書の肝は人工減少への対応策の提言。政治家だけでなく、一般国民も一読しておく価値あり! 結びとして書かれた若者へのメッセージが、未来への期待を呼び起こします。

  • 河合雅司『未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること』(講談社):話題となった未来の年表の続編。豪雨災害、出世の遅れなどなど。『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』の結びは若者へのメッセージでしたが、本著の結びはリタイア世代へ向けてのものです。全世代で未来を見つめていきたいですね。

最後まで読んでいただき有難うございました!


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