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【書評】アフリカの課題とは?「あなたとSDGsをつなぐ『世界を正しく見る』習慣」を読む

【書評】原貫太『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』(KADOKAWA) 書評

SDGsという言葉を聞くようになってはや数年。こうしたキーワードは一過性のブームで終わってしまうことも多いですが、日本においてはまだまだ健在といえるでしょう。

とはいえ、「SDGs疲れ」という新たなキーワードも登場し、アメリカでは2023年5月に反ESG法が成立。ESGとは「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」を意味し、企業のSDGs取り組みへの評価基準になりうる投資指針です。こうした動きを見るに、SDGsに関する風当たりの強さも意識せざるを得ません。

そこで思ったのは、結局SDGsって何なんだろう?ということ。

今回は原貫太氏による一冊をご紹介します。原貫太氏は1994年生まれの社会活動家。早稲田大学在学中から国際協力活動に取り組み、ウガンダの元子ども兵や南スーダンの難民を支援してきた方です。

本書には、あの著名な書籍『FACTFULNESS』の共訳者の上杉周作氏による推薦、との文字が。SDGsを含めた環境問題や貧困問題の本質を、データを通して全体的に読みやすい言葉で書かれている一冊です。アフリカで支援活動中の社会活動家の説得力ある言葉に惹き込まれてしまうこと間違いなしですので、是非お読みください。

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こんな方にオススメ

  • SDGsに関心がある
  • 世の中をよりよくしたい
  • 貧困問題のことを知りたい

目次

本書の構成は次のとおりです。

第1章 アフリカはなぜ今も経済的自立ができないのか
第2章 「衣服ロス」から考える大量廃棄社会
第3章 肉食が水不足に繋がる「不都合な真実」
第4章 世界最悪の紛争とスマートフォン
第5章 データをもとに「アフリカ」を正しく読み解く
第6章 なぜ近年、日本で貧困が叫ばれるのか

善意の寄付がアフリカに貧困をもたらす

原貫太氏はアフリカを中心に活動していることもあって、アフリカにおけるさまざまな課題についての説明がとても丁寧です。データに基づく分析に軸を置きつつも、ときには実体験を元にした気づきが書かれており、より説得力のある一冊となっております。

まず最初の第1章で語られているのは、先進国からアフリカへ送られてくる善意の古着の寄付によって、現地の産業が破壊されているという事実です。

 私が国際協力の活動をしてきたウガンダでは、衣料品購入の81%は古着が占めていると言われています。実際に現地で目にしていた衣類のほとんどは国外からの古着でしたし、この数字は体感的にもそれほど大きく逸れているとは思いません。洋裁ビジネスをするウガンダの女性からは「古着のせいで地元で生産される服は売れにくい」といった悩みを耳にすることもありました。

 もしも現地の人たちが国外から輸入された古着ではなく、地元で生産された服を購入していれば、何が違っていたでしょうか。おそらく地域の経済が回り、現地の雇用が増え、先進国からの「お下がり」に依存しない自立した経済体制を作ることができていたはずです。

引用元:原貫太『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』(KADOKAWA)

これは、貧しい人びとのために自宅に眠る不要な衣類を寄付しよう、という行動についての指摘です。こうした善意から生じた行為が、実はかえって貧困から抜け出すことができない状況へ追い込んでいるというのです。

もしかしたら、こうした事実は各種メディアで見聞きしたことがある方もいるかもしれません。自分が良かれと思ってした行動が負のスパイラルを引き起こしていると知ったら、大きなショックを受けてしまいますよね(^_^;)。

私もここ数年、遺品整理をはじめとした断捨離に取り組んでいるのですが、モノを捨てるというのは心理的に負担に感じることが多いです。なぜって、資源もお金も無駄遣いしたという事実に直面しなければならないからです。

しかし、その心理的負担を減らそうと思って古着などを寄付した結果、自宅の不要品が巡り巡って遠く離れたアフリカに辿り着くとしたら、どうでしょう。役に立っている場合ももちろんあるはずですが、上述のとおり現地の経済に悪影響を及ぼしています。

さらに、古着の一部はゴミになるだけなのだそうです。これは国外へゴミを輸出していることに他ならず、つまり、自国で処理すべきゴミを海外で処理しているということになります。

肉食と飢餓・水資源の関係

第3章では、肉食を巡って飢餓の問題や水資源の問題を中心に記しています。

 農林水産省が2021年3月に出している報告書によれば、鶏肉1kgを生産するために必要な穀物の量は4kg、豚肉1kgを生産するためには6kg、牛肉にいたっては1kgを生産するために11kgの穀物が必要になります(日本における飼養方法を基にしたトウモロコシ換算による試算)。

 つまり、少量の肉を生産するためにその何倍もの量の飼料穀物が必要になり、その飼料穀物を生産するためには広い土地や大量の資源が必要になる、ということです。
 実際に世界中にある農地のうち、75~80%は人間が食べる食料を生産するためではなく、家畜が食べる飼料を生産するために使われています。

引用元:原貫太『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』(KADOKAWA)

人間が1kg分の穀物をそのまま食べる場合と比べると、動物の肉を1kg分食べるときの方がより多くの穀物が必要になるということになります。これは、飢餓や栄養不良に苦しむ人びとよりも、家畜に対して食料が優先されるということを意味します。

しかも、畜産においては大量の水資源を使用するという観点も重要です。牛肉1kgを生産するためには、なんと約2万リットル(!)が必要になるということです。

水資源を大切に使用すること(SDGsの項目6「安全な水とトイレを世界中に」)は、環境問題や人権問題の是正に繋がります。

環境省がバーチャルウォーター(仮想水)という概念を紹介しています。

バーチャルウォーターとは、食料を輸入している国(消費国)において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したもの。

このサイトで「仮想水計算機」というリンクをクリックすると、各食品のバーチャルウォーターが計算できます。日頃食べたり飲んだりしている食品のバーチャルウォーターを調べてみましょう。

ちなみに、最近コンビニで気軽に飲めるようになったコーヒーのバーチャルウォーターは1杯あたり210リットル。一方、紅茶は1杯あたり5.928リットルです。コーヒーは紅茶と比較して約35倍の水資源を必要とするということですね。ビ、ビックリ…!

アフリカの貧困と日本の貧困

ここまでアフリカを中心に語ってきた著者が第6章で最後に掲げるテーマは、日本の貧困の問題です。

 しかし、言うまでもなくアフリカの生活様式と日本の生活様式には大きな違いがあるため、両者を同列に語ってしまうと、相対的貧困の本質的な問題を見誤ってしまいます。まずは大前提となる知識として「絶対的貧困」と「相対的貧困」の定義を確認しておきましょう。

 第4章でも見たように、絶対的貧困とは人間として最低限の生活すら送れていない状態を指し、世界銀行が定める「国際貧困ライン」では1日1.9ドル未満(日本円で約200円以下)で暮らす人を貧困層と定義しています。この定義を下回るレベルの生活では衣食住すらままならず、また基本的な医療や初等教育にもアクセスが難しいことから「絶対的貧困」と呼ばれます。

引用元:原貫太『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』(KADOKAWA)

本章で語られている生活保護やシングルマザーなどのひとり親家庭における貧困の話は、とても興味深いところなので是非読んでいただきたいです。重いテーマではありますが、読みやすい文章で書かれているので誰でも抵抗無く読むことができると思います。

相対的貧困は、その文化圏における生活水準と比較して相対的に貧しい状態を指します。国際貧困ラインの1日1.9ドル(2024年現在、日本円で約300円(1ドル=150円で換算))を1ヶ月で換算すると、約9000円(同上、2024年の為替レートで計算)です。

日本全体で見たときに、毎月9000円未満で暮らす方だけを対象にするとだいぶ議論が限定されてしまいますので、相対的貧困の観点で貧しさを考えていくことが重要になります。

たとえば、「友達と遊園地に行けない」「生理用品が買えない」「高校への進学をあきらめる」などの悩みを抱える方が、あなたがお住まいの地域にもいらっしゃいます。海外の問題に視野を広げる前に、日本の現状を知ったり、当事者の声に耳を傾けることがまず大切なことだといえるでしょう。

関連書籍

  • ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP):『FACTFULNESS』共訳者の上杉周作氏が今回ご紹介した書籍を推薦しています。絶対的貧困率(極度の貧困にある人)の話題もあります。別記事でも紹介していますので、宜しければお読みください。
  • デビッド・ヒューム『貧しい人を助ける理由 遠くのあの子とあなたのつながり』(日本評論社):開発途上国への援助のあり方について考える一冊。日本は、北欧諸国と比較して対外援助額がすこぶる少ないです。しかし、倫理観を元にした資金提供のみ呼び掛けても世界的な不平等は解決できません。先進国国民にどう動いてもらうか?が大きな課題ですね。
  • 保田隆明、田中慎一、桑島浩彰『SDGs時代を勝ち抜く ESG財務戦略』(ダイヤモンド社):ESGのことをよく知りたい方には、こちらの書籍がおすすめです。別記事でも紹介していますので、宜しければお読みください。
  • 駒村康平、渡辺久里子『貧困の諸相(放送大学教材)』(放送大学教育振興会):学術的な観点で議論を深めたい方に是非読んでほしい一冊です。別記事でも紹介していますので、宜しければお読みください。
  • 井出留美『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎):飢えで消えていく儚い命がある一方で、まだ食べられる食品が捨てられています。まずは自分の出来ることから取り組みましょう!
  • 李永淑(編集)『モヤモヤのボランティア学: 私・他者・社会の交差点に立つアクティブラーニング』(昭和堂):国際協力を含むボランティア活動について考える一冊です。別記事でも紹介していますので、宜しければお読みください。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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