長い景気低迷時代を過ぎ、現代は空前の投資ブームを迎えています。とは言え、かつてのバブル時代の教訓を踏まえ、コツコツ長い時間をかけて…という少額長期積立型の投資が脚光を浴びていますね。横山光昭氏の『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)という書籍も大好評となりました。
さて、今回は同じく“3000円”というキーワードが表題に含まれるこちらの本のご紹介です。
時代を反映した各世代の考え方が描かれる
タイトルに“三千円”とあるものの、本書は資産運用の心得を伝える書ではありません。現役若手女性会社員や子育て中の専業主婦、旦那様を亡くしたリタイア女性などを主人公に、お金に関する考え方や直面している壁の違いを浮き彫りにしていく小説です。
以下に引用した冒頭部分はとても象徴的で、各話の登場人物を軸にした物語展開は、人生のあり方に重なります。
人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。
引用元:原田ひ香『三千円の使いかた』(中央公論新社)
え? 三千円? 何言っているの?
中学生だった御厨美帆は、ちょうど読んでいた本から顔を上げた。
「人生が決まるってどういう意味?」
「言葉どおりの意味だよ。三千円くらいの少額のお金で買うもの、選ぶもの、三千円ですることが結局、人生を形作っていく、ということ」
生きていくにはお金も家族も大切だ
本書は全部で6話の構成となっています。うち5話はある一家の女性たちが主人公となっている中で、「第4話 費用対効果」だけは異色で、この一家と血の繋がりの無いある男性が主人公です。私には、このエピソードが最もグッときました。
節約って、生きていることを受け入れた上ですることよ。費用対効果なんてない、ってことを受け入れてからの節約なのよ。
引用元:原田ひ香『三千円の使いかた』(中央公論新社)
上記の引用がどんな場面で交わされる会話か、ネタバレになってしまうのでここでは明記しません。
ただ、『架空の犬と嘘をつく猫』(中央公論新社)で言及される、“役に立たないものの大切さ”なんかと少し通ずるものがあるという所感を私は抱きました。併せて読むと、なかなか考えさせられるものがあるかと思います。
世界に、役に立つものしか存在せんかったらあんたどうする?
引用元:寺地はるな『架空の犬と嘘をつく猫』(中央公論新社)
そんな世界、お断りよ。
一貫して女性目線
この小説は一貫して女性目線で描かれている印象です。このため、特に女性の方には共感できる部分が多々あるかと思います。
「第5話 熟年離婚の経済学」では、長年連れ添った夫への不満が記載されており、ドンピシャ世代には「わかるわ~」という方もいるかもしれません。……男性も妻の不満を知るうえで勉強になるかも?
関連書籍
- 横山光昭『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム):横山光昭氏が少額での資産運用術を指南する一冊。
- 寺地はるな『架空の犬と嘘をつく猫』(中央公論新社):嘘つき一家の物語。
最後まで読んでいただき有難うございました!
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