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【書評】大どんでん返し!SNS時代の本格ミステリー!「#真相をお話しします」を読む

【書評】結城真一郎『#真相をお話しします』(新潮社) 書評

日常的にSNSを利用していると、いろいろな考えの方がいることに気づかされるものです。そして、これまで出会うことが無かった世界へ足を踏み出すきっかけになったりしますよね。

今回ご紹介する『#真相をお話しします』は、X(旧Twitter)の読書垢で紹介されていた一冊です。読んでみたらたいへん素晴らしく…ホラーミステリーとして盛大にガクガクブルブルしてしまいました!

ミステリー好きの方には大いに楽しめることと思います。それでは、さっそく見ていきましょう!

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こんな方にオススメ

  • 現代的なミステリー作品を探している方
  • ドキドキハラハラしたい方
  • 短編作品が読みたい方

著者について

著者の結城真一郎氏は、1991年生まれ。そう、平成生まれです。

そして、開成中学校・高等学校を卒業、東京大学法学部を卒業と、なんとも華々しい経歴の持ち主。しかしながら、文体は軽やかでお堅い感じは一切なく、誰でも読みやすい文章と思います。

本書収録の『#拡散希望』は、第74回日本推理作家協会賞<短編部門>を受賞しました。

各話の概要

惨者面談

初出は「小説新潮」2019年2月号。家庭教師の仲介営業マンの大学3年生が小学6年生のお宅に訪問する話です。

『矢野悠くん 一二歳 木曜十七時から面談希望 都内の私立小学校に通っている 小中高とエスカレーター式 中学からもっとレベルの高い外部の学校(御三家など)に通わせたい 塾は小学三年から 夏期講習で結果が出ず不安になった 得意科目は国語 習い事はピアノと水泳 お父さんは海外に単身赴任中』

引用元:結城真一郎『#真相をお話しします』(新潮社)

イマドキの中学受験事情になるほどと思いつつ、著者の実体験も含まれているのでは?と想像を掻き立てられます。作品の随所に仕込まれた記述の断片が、ラストで一気に繋がるさまは見事です。

ヤリモク

初出は「小説新潮」2021年2月号。娘のパパ活を案じながらも、マッチングアプリに勤しむ中年男性の話です。

 三十二歳、独身。彼女はそう信じているが、実際は四十二歳、妻子持ち。罰当たり、という言葉とともに娘の顔が脳裏をよぎる。嗚呼、愛する美雪よ。こんなパパをどうか赦しておくれ。いや、もちろん悪いことをしてるっていう自覚はあるんだ。本当だよ、嘘じゃない。だけど、ここまできておいて引き返すのは「据え膳食わぬはなんとやら」でさすがに無理ってもんさ。嗚呼、愛する美雪よ。こんなパパをどうか赦してくれーー

引用元:結城真一郎『#真相をお話しします』(新潮社)

結末に予想を裏切られたし、とても怖かった…!読み終わった後に作品名を眺めて、「あぁ、そうか…!」とハッとさせられました。その後を想像させる終わり方も恐ろしく、読了後も胸がザワツいています…

パンドラ

初出は「小説新潮」2021年9月号。不妊に悩んだ末、精子提供を始めた夫婦の話です。

 僕が精子提供を始めたのは、自分たち夫婦がずっと”不妊”に悩まされてきたからだ。
 妻の香織は大学の研究室の同期で、交際が始まったのは大学四年の夏ごろ。プロポーズしたのは、僕が社会人一年目ーー院卒なので、二十五歳のときだ。

引用元:結城真一郎『#真相をお話しします』(新潮社)

まさに現代的なテーマを扱いつつ、謎解きの鍵は古典的です。とはいえ、そのストーリーにはいくらか仕掛けがあり、構成力に脱帽

三角奸計

初出は「小説新潮」2022年2月号。リモート飲み会に興じる学生時代の腐れ縁3人組の話です。

 このトークグループができたのは、大学一年の五月のこと。勇んで都内の某有名私大へと進学したものの、地方出身のため特に知り合いもおらず、そうしてなんとなくはぐれ者と化していた三人が自然と寄り集まった形だった。

引用元:結城真一郎『#真相をお話しします』(新潮社)

冒頭から不穏な雰囲気が満載です。危機的状況のなかで、3人組の連帯はいかに?物語のその後が最も怖かったのがこちらの作品でした。ラストの一文も至言だなと思います。

#拡散希望

初出は「小説新潮」2020年2月号。第74回日本推理作家協会賞<短編部門>を受賞しました。人気YouTuberを夢見る島育ちの小学生4人組の話です。

 ーーパパもママも、忙しない生活にちょっぴり疲れちゃってね。
 ーーだから「子育ては絶対に田舎で」って決めてたの。
 そんな両親がここ匁島に移住を決めたのは、僕が生まれてすぐのことだったという。

引用元:結城真一郎『#真相をお話しします』(新潮社)

YouTuberという仕事がもはやお馴染みになったこと感じさせる点で、たいへん現代的です。結末に向かう展開が素晴らしい!特にラストでは、自分自身のYouTubeとの関わりも考えさせられちゃいました。

読みどころ

どの作品も、最後に大どんでん返しが待ち受けています。いろいろ推測しながら読み進めていくものの、その予想がすべて当たっていたというケースは少ないのでは…?「あれ?」という違和感が生じたらいったん立ち止まり、前のページを読み返してみましょう!

すべての作品において、冒頭が不穏な書き出しで始まるため、終始ザワザワしっぱなしです。しかも、登場人物たちが一癖も二癖もあります。

どの話も殺人事件が絡んでいるものの、読み手は不謹慎にも謎解きに夢中になってしまいます。ザワザワやモヤモヤを引きずらないためにも、一気に読み進めましょう!

関連書籍

  • 知念実希人『仮面病棟』(実業之日本社):どんでん返しといえばこちらの作品。現役医師が描く、医療サスペンスたっぷりのミステリーです。2020年には坂口健太郎氏主演で映画化もされました。
  • 知念実希人『時限病棟』(実業之日本社):現役医師の描く病棟シリーズの続編です。『仮面病棟』を読んだ後はこちらもどうぞ!
  • 深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房):第160回直木賞の候補作として選出され、2019年本屋大賞第3位、第9回Twitter文学賞(国内編)第1位を受賞。ナチス・ドイツが敗れ米ソ英仏に統治されていた時期のベルリンで、ある事件が起きて――。謎解き要素を含む歴史小説なら、こちらがオススメです。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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