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今回は、公立高校の社会科教員でもある著者がまとめた世界史の入門書をご紹介します。
こんな方にオススメ
- 世界史に苦手意識がある大学受験生
- 海外ニュースを歴史的な背景から考えたい社会人
- 学び直しとして教養を深めたい方
物語を読むように歴史を学ぶことができる一冊
冒頭にて、著者は本書で解説する世界史の特徴を以下3点、挙げています。
①一般的な教科書とは違い、すべてを数珠つなぎにして「1つのストーリー」にしている
引用元:山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』(SBクリエイティブ)
②「主語」が変わるのを最小限におさえている
③年号を使わない
大学受験で世界史を選択した経験がある方の多くは、次のような経験があるのではないでしょうか?教科書のページをめくっていくうちに時代や地域があっちへ行ったりこっちへ行ったり…。
あれ…?この人物はいつどこで活躍した人だったっけ…?
そうです、時代と地域が頭の中でごちゃごちゃになって、訳が分からなくなってしまうのです。日本の場合は島国ということもあってか、国としての形が大陸ほど大きく揺らがずに現在まで至っています。
しかし、たとえば民族大移動に代表されるように、フランス、ドイツなどは民族・国家の両者で考えてもかなりの興亡が繰り広げられてきましたし、中国の歴代王朝も、他民族からの侵略などで国が滅亡・勃興するという歴史を紡いできたのです。
本書の最大の特徴は、なんといってもこの「ストーリー形式」で理解することができる点にあると言えます。
読み終えたとき、著者の語る本書の良さが身を持って実感できることでしょう。
(中略)地域や王朝などの「主語」があまりにも頻繁に変わってしまうと、「主語」を把握するだけで大きな負担がかかり、内容に集中しづらくなってしまいます。そのため、教科書をいくら読んでも、内容が頭に残らないのです。
引用元:山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』(SBクリエイティブ)
そこで本書では、「主役」の変化を最小限に留めるため、その他の地域は脇役として登場させています。
主役が別の地域に変わるときは、それまで主役だった地域が今度は脇役にまわります。
そうやって、できるだけ”一直線”に読むほうが、結果的に、地域間、国家間の「横のつながり」がより理解できることを実感していただけるはずです。
豆知識が豊富で興味深い
本書では、先に挙げたとおり年号が登場しません。暗記を重視する受験勉強用テキストとは決定的に異なる点として、ストーリーとして読み進めることができるのです。
したがって、「教養を深めたい」という目的で世界史の入門書を手に取りたい社会人の方にもオススメです。
実際、読んでいて「えっ、そうなの?」「なるほどな~」と思わせる雑学も得られて大変面白いです。著者は高校教諭であり、これまで生徒に興味を持ってもらう工夫をたくさん試みてきたのだろうな、と想像させる魅力があります。
たとえば、宋の建国にあたってのエピソードがビックリ仰天ものでした。
五大十国の混乱を鎮めて宋を建国し、再び秩序をもたらしたのが趙匡胤という人物です。彼は、もともと皇帝になる気はなかったようですが、ある夜、弟に突然起こされ、半ば強引に皇帝の衣を着せられると、弟に「兄上が皇帝になることを承知しなかったら兄上を殺して俺も死ぬ」と皇帝就任を迫られます。そして、弟に連れられるままに兵士の前に出されると、控えていた多くの役人や兵士たちが、趙匡胤に向かって万歳を唱え始めます。ひっこみがつかなくなった趙匡胤は、そのまま皇帝になることを承認してしまうのです。
引用元:山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』(SBクリエイティブ)
そして、このような経緯で即位した趙匡胤の人柄に触れつつ、その政治を理解するよう促します。
字面だけで人物名や施策を覚えようとすると、ただの暗記作業を繰り返すだけです。しかし、深みのあるエピソードを踏まえて、その登場人物の人間性を理解しながら歴史を理解しようとすると、もっと理解を深めながら記憶することができるはずです。
ナチスドイツが生まれた背景に思いを馳せる
戦後に生まれた私たちの多くは、第二次世界大戦を過去の記録から読み取ることしかできません。結果としてどうなったか、ということをただ知ることができるのみです。しかし、本当の意味で「知っている」と言えるのでしょうか?
私がよく理解できていなかったのが、ナチスドイツが生まれた背景でした。どのような時代背景でヒトラーが登場し、政権を奪い、国民の多くが熱狂したのか?
これらを、ドイツという地域から考察するだけでなく、時代的な考え方の潮流を考慮することも可能なはずです。そして、さまざまな観点から歴史を考察するということが未来へのヒントに繋がるのでしょう。
本書を読んでいる間、ナチスドイツが生まれた背景についてさまざま思いを巡らしました。こうした時間は、私にとって大変充実した時間となりました。本を読んで終わり、ではなく、次につながる考えを深めることができるという点で、歴史というのは価値ある教養ですね。
なお、ここでも第一次世界大戦でドイツが貸せられた賠償金の豆知識が書かれており、興味深いです。
ドイツはすべての植民地を失い、軍備にも制限が与えられたうえに、”天文学的”といわれるほどの多額の賠償金をかけられます。国民総所得の2.5倍といわれたので、今の日本に例えると1250兆円ほど、つまり国民ひとり当たり1000万円ほどの額です。
引用元:山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』(SBクリエイティブ)
さて、この賠償金を払い終えたのは一体いつのことだったのか…これもまたビックリ仰天すること間違いなしですよ。是非、本書でお確かめください!
関連書籍
- 山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書』(SBクリエイティブ):『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』の続編です。歴史をストーリーで学んでいく手法を踏襲しながら、日本の歴史を俯瞰していく。こちらも大人の教養として読んでおきたい一冊です。別記事にてご紹介していますので、宜しければご覧ください。
- 山崎圭一『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書【経済編】』(SBクリエイティブ):お金の流れを主役にしながら、歴史を眺めてゆきます。まずは今回ご紹介した『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』で全体の流れを押さえた後に経済編を読めば、世界史への理解が格段に進むはず。
最後までお読みいただき有り難うございました!
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