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【書評】生涯学習を後押しする教育心理の知見!放送大学教材の「教育・学校心理学」を読む

【書評】進藤聡彦、谷口明子『教育・学校心理学(放送大学教材)』(放送大学教育振興会) 書評

このブログでは、放送大学で日々学びを深めている私が、履修した科目の印刷教材(テキスト)を書評の形で紹介しています。ということで、ブログを訪問くださる方は放送大学の学生さんが多いものと思われます。

放送大学の学生さんや、放送大学に関心をお持ちのあなた! もしかして、「放送大学」だけでなく「生涯学習」という言葉にも強く惹かれるのではありませんか!?

そんな方にすご~~くオススメしたいのが、「教育・学校心理学」です。こちらの科目、私は公認心理師の学部カリキュラムを達成するために履修を決め、「学校カウンセリングみたいな内容かな?」などどあまり深く考えずに学びはじめたのですが…生涯学習に邁進するすべての独学者に役立つ内容満載でした!!

「心理と教育コースじゃないよ」というあなたにも、「放送大学の学生じゃないよ」というあなたにも、参考になる内容が豊富に盛り込まれているのです。言ってみれば、これまで教育を「受ける」立場であったあなたが、教育を「授ける」立場へと視点を動かしてみる営みなのかもしれません。

印刷教材(テキスト)は、前半は進藤聡彦先生による講義、後半は谷口明子先生による講義となっています。前半は心理学的観点が強く、後半は実務的観点が強いです。

今回は、実生活でも教育現場でも役立つ「教育・学校心理学」の印刷教材(テキスト)をご紹介します。

書籍は全国の書店などで購入できます。放送大学生でない方も、本科目の講義はBS放送などのテレビで視聴可能です。詳しい視聴方法は以下をご参照ください。

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放送大学科目の書評記事のまとめはこちら

放送大学の科目についての書評記事は以下にまとめました! ご興味あればご参照ください♪

本講座の基本情報

本講座「教育・学校心理学」は、放送大学で開講されている科目です。

  • 2020年度開設
  • 放送授業(テレビ配信)
  • 心理と教育コースの専門科目

具体的なシラバスはこちらからご参照ください。

放送授業はテレビで公開されており、書籍はAmazonほか各書店でお買い求めいただけます。各地域におけるテキスト取扱書店は下記をご参照ください。

こんな方にオススメ

  • 学校教育に関わる仕事がしたい
  • 公認心理師を目指している
  • 生涯学習に関心がある

目次

本書の目次は下記のとおりです。全15回の放送授業に沿った章立てとなっております。

 1 教育・学校心理学を知る
 2 教科学習の教育心理学的視点
 3 教科の授業の構造と学習者の実態
 4 記憶に残る知識をつくるには
 5 学習内容の理解と応用
 6 学習を支えるものとしての動機づけ
 7 自律的な学習者の育成
 8 教育評価の諸側面
 9 学級集団の特徴
10 教師の役割と影響
11 教育相談
12 道徳性の育成
13 発達障がいの理解
14 特別な教育的ニーズのある子どもへの教育支援
15 キャリア教育

メタ認知と自己調整(self-regulation)

すべての学習者に最も深い学びを与えるのは、「第7章 自律的な学習者の育成」でしょう。ここでは「メタ認知」が取り上げられています。

 何を学習したらいいのか分からないとか、どう学習すればいいのか分からないという問題は、メタ認知の問題と関わる。メタ認知とは、自分自身の学習の状態を把握、評価したり、学習の方法を制御、調整したりする認知機能(頭の中の働き)のことである。
 メタ認知は大きくメタ認知的活動とメタ認知的知識に分類される。また、メタ認知的活動はメタ認知的モニタリングとメタ認知的制御からなる(図7ー1)。

引用元:進藤聡彦、谷口明子『教育・学校心理学(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

たとえば、小学生や中学生の頃に次のような経験をしたことはありますか? これらはすべてメタ認知という考え方で説明することができます。

  • 実は理解できていなかったけど、頭では理解していると思っていた。
  • 英単語を何度も書くことで覚えられるようになった。
  • 分からないから基本から勉強し直そう。

そして、メタ認知は自己調整学習の一種と考えられています。

(中略)自己調整という概念はさまざまに定義されているが、一般的には人が自分自身の認知、行動、そして動機づけをモニターし、それらを自分が望む方向に制御、調整しようとする機能を指す。
 学習における自己調整、すなわち自己調整学習は学習の向上という方向性をもち、認知、行動、動機づけをモニターし、制御、調整することであり、先に述べたメタ認知は、自己調整学習の認知面の働きとして、また自己動機づけの過程は動機づけ面での働きとして位置づく。

引用元:進藤聡彦、谷口明子『教育・学校心理学(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

このような自己調整の結果として、たとえば次のような学習方略や目標設定が挙げられます。

【学習方略】歴史上の人物に好きな俳優を当てはめた物語を書いて学習しよう!
【目標設定】15分で1ページ進めよう!

もちろん、これらは学校での学習に関する話題だけではなく日常場面でも役に立つわけで…。たとえば、「1日1個モノを捨てる」という目標を掲げて片づけに邁進するのも自己調整の一つといえるでしょう。

↓手前味噌ですが、「1日1個モノを捨てる」という目標を設定し、1000日間にわたって捨て活をした実体験を記事にしております。もしご興味あればご覧ください!

誤概念と適性処遇交互作用

先程挙げた例の一つ、「実は理解できていなかったけど、頭では理解していると思っていた」と関連するのが、誤概念です。

 先に授業を構想するに当たって、学習内容は階層的構造をもつため、目標の前提となる知識を子ども達に保証する必要があると述べた。ただし、正しい知識を系統的に教えていけば、目標に到達できる訳ではない。子ども達は学習内容について白紙の状態ではなく、日常の経験から自分なりに知識を獲得している。そうした知識の中には誤ったものも含まれる。例として、ストーブに近づいたり離れたりした経験から得た「夏に暑いのは地球と太陽の距離が近くなり、冬に寒いのは地球と太陽が離れるからだ」といった知識が挙げられる。
 この例のように、学習者が日常の直接的、間接的経験から獲得した知識は、その経験の範囲の狭さのゆえに、誤っている場合がある。それは先に述べたru\bar {ru}であり、また誤概念、素朴概念などと呼ばれているものである(以下、本書では多くの研究で用いられている誤概念の用語を用いる)。

引用元:進藤聡彦、谷口明子『教育・学校心理学(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

本書では、上記引用箇所で挙げた「夏に暑いのは地球と太陽の距離が近くなり、冬に寒いのは地球と太陽が離れるからだ」の他にも、誤概念がいくつか紹介されています。実は、ここで取り上げられている誤概念の一部は、私は大人になった今も持ち続けていました…。ひょんなことから自分の知識が誤っていたことに気づきびっくりしました!

そこで、日常場面で思い至ったのが、選挙などの際に各党の候補者から語られる言葉です。「私にはまったく理解できない主張だなぁ」と思う発言をしばしば耳にするのですが、これは候補者が誤概念を持っているからなのか、私が誤概念を持っているからなのか。賛成するも反対するも、事実確認のプロセスが重要だなと感じ入った次第です。

併せて印象に残ったのが、適性処遇交互作用です。

 また、個人差については適性処遇交互作用(aptitude treatment interaction: ATI)の存在にも留意しなくてはならない。これは、子ども達にとって効果的な教授法(処遇)は、その子どもの適性によって異なるというクロンバックの考え方である(Cronbach、1957)。ここでいう適性とは、個人によって異なる性格や学習に対する動機づけの強さなどの特徴であり、特性といえるようなものである。交互作用とは、複数の要因が組み合わさることで互いに影響を及ぼしあって生じる効果のことである。

引用元:進藤聡彦、谷口明子『教育・学校心理学(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

ここでは、大学生の対人的積極性の程度によって、映像による教授法と教師による教授法とで効果に違いが見られたという研究結果が紹介されています。

そこで思い出したのが、企業における新入社員の教育です。私は新型コロナウィルス感染症が急拡大した時期に、新入社員を対面なし(オンライン会議、メール、チャット)で教育したという経験があります。当時は、「実際に顔を合わせることもなくオンラインだけでの教育はやめた方がいい」など周囲からたくさん懸念の声をいただいたのですが、結果として、この新入社員は貴重な戦力になるまでに成長してくれました。

私は、この経験においては、教える側の説明能力や教わる側の態度・事前知識だけでなく、適性処遇交互作用が見られたと解釈するのが妥当なように考えています。「実際に顔を合わせることもなくオンラインだけでの教育はやめた方がいい」は誤概念とは言えないまでも、検証が必要な考え方であると言えるでしょう。

病弱教育

後半部分で特に印象に残ったのは、「第14章 特別な教育的ニーズのある子どもへの教育支援」です。心理学に関する本を読んできたなかで、特に子どもの領域でよく目にしたテーマは「発達障がい」「虐待」「貧困」でした。本章では、私がこれまであまり触れてこなかった「病弱・身体虚弱児」への教育支援が語られていました。

 病弱教育とは、「病弱・身体虚弱教育」の略称であるが、この「病弱」「身体虚弱」という言葉は医学的な定義のある述語ではなく、慢性的な疾病または特異体質のため体力が弱っている状態を表す一般的な意味で用いられている。教育行政上は、疾患が長期にわたっている者、または長期にわたる見込みがある者で、慢性の疾患を有し、継続的な医療または生活規制を必要とする者を「病弱」、先天的または後天的な要因により、身体諸機能に異常があったり、疾病に対する抵抗力が著しく低下していたり、頭痛や腹痛などのいろいろな不定の症状を訴える者、あるいは疾病の徴候が起こりやすいがすぐ入院治療というわけではない者を「身体虚弱」と規定している(国立特別支援教育総合研究所、2015)。

引用元:進藤聡彦、谷口明子『教育・学校心理学(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)

思えば、自分が小学生の頃も中学生の頃も、体調不良で長期間お休みしている同級生、食物アレルギーがあって皆と違う給食と食べる同級生、闘病中の同級生などいろいろな子どもがいました。

小学生や中学生の数ヶ月って、大人になってからの数ヶ月とは比較にならないくらい貴重な時間です。私は何度か転校しているのですが、転校先の小学校でやっと学校生活に慣れた頃に、私が転校する前から長くお休みしていた同級生と初対面したときはとても緊張したことを思い出します。久し振りに学校に来たその同級生も、私といういきなり新しい同級生が増えていて不安だったのではと思います。

以前からの友だちが仲良くしてくれるか。勉強についていけるか。保護者や教員の不安はいかほどか。教員は最大限の配慮をして、この同級生に寄り添っていたことと思います。

本書の後半では、このように教科学習(国語・算数・理科・社会など)の観点ではなく、学校教育の場におけるダイナミクスを感じさせるテーマが多いです。学校教育に携わる方には重要な示唆を与えてくれることでしょう。

放送大学科目の書評記事のまとめはこちら

放送大学の科目についての書評記事は以下にまとめました! ご興味あればご参照ください♪

関連書籍

  • 森津太子、向田久美子『心理学概論〔改訂版〕(放送大学教材)』(放送大学教育振興会):心理学を学ぶ方は、まずこちらの書籍からスタートすると良いです。2024年度には改訂版が登場し、よりパワーアップしています。2018年度版について記事を書きましたので、宜しければお読みください。

  • 倉光修『臨床心理学概論(放送大学教材)』(放送大学教育振興会):臨床心理を学ぶ方は、こちらを是非一読ください。臨床心理学の基礎が学べます。記事を書きましたので、宜しければお読みください。

  • 村松健司、坪井裕子『福祉心理学(放送大学教材)』(放送大学教育振興会):学校における心理学を考える際に外せないのは、やはり児童に対する心理的ケアです。こちらの書籍は「児童虐待への心理支援」に3章も費やしており充実しています。

  • 読書猿『独学大全 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』(ダイヤモンド社):独学者のバイブルとして手元に置いておきたい一冊。本サイトでも別記事で紹介していますので、宜しければ併せてご参照ください。

  • 池上彰『なぜ、読解力が必要なのか? 社会に出るあなたに伝えたい』(講談社):新入社員を対面なしで教育した経験は、こちらの書評記事でも紹介しています。SNSが身近な存在となった現代、コミュニケーションの取り方もずいぶん変わりました。日本人の読解力低下を憂う声も多く、コミュニケーション能力について考えさせられる本です。本サイトでも別記事で紹介していますので、宜しければ併せてご参照ください。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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