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【書評】正しいサメ知識と癒しを与えるエッセイ本!「ほぼ命がけサメ図鑑」を読む

【書評】沼口麻子『ほぼ命がけサメ図鑑』(講談社) 書評

今回ご紹介する本は、シャークジャーナリスト沼口麻子氏による、サメ好きによる、サメ好きのためのサメエッセイ集です。

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こんな方にオススメ

  • サメの生態に興味がある
  • 水族館やダイビングに行きたい
  • 日常を癒す読み物を求めている
  • 動物が大好き!

読むだけでシャーキビリティが高まる

沼口氏は東海大学海洋学部に入学し、大学一年生の時にラブカ(8500万年前から現存するとされるサメ)の顎標本を作成したことをきっかけに、サメに目覚めたとのこと。大学卒業後は同大学院に進み、さらにサメの研究を邁進します。

そんな経歴を知らずとも、この本から溢れ出るサメ愛は尋常ではありません!何より、サメに関する正しい知識を広めたいという著者の思いがよく伝わってくるのです。

沼口氏は語ります。

 そんなサメにまつわる「誤解」や「偏見」を解くために第1章でサメの相談室を設けて質問に答えることにした。第2章では、わたしが身をもって体験したサメを図鑑仕立てで紹介する。さらに気に入ってくれたなら、第3章まで読み進めてシャーキビリティを高めてほしい。

 え? シャーキビリティって?

「サメに対する知識や熱い気持ち」という意味の、わたしが作った造語だ。

引用元:沼口麻子『ほぼ命がけサメ図鑑』(講談社)

私自身はサメ好きという訳では無いのですが、この本を読んで間違いなくシャーキビリティが高まりました。

サメ素人にも理解できる説明でシャーキビリティが高まる

先の引用箇所でも触れられているように、この本では第1章「サメのよろず相談室」と題して、サメについて読者が抱いている様々な疑問について解説をしてくれます。

たとえば、

Q.『ジョーズ』ってホホジロザメが人を食べまくる映画でしたよね?
Q.キャビアってサメの卵ですよね?
Q.サメに点滴っているんですか?

などなど。

これらの質問には、ときおり専門的な用語を使いつつも、サメ素人に分かりやすい言葉で事実に基づく回答が掲載されています。

サメに無知な私からすると、新しい知識に「へぇー! そうなんだー!」とワクワクした気持ちで読み進められるものでした。特に、サメの出産の形態がさまざまである点は、目から鱗でした(サメだけに)。これはかなりビックリするので是非読んでいただきたい一節です。

著者はきっと、サメをよく知らない人たちに日頃からよく説明していらっしゃる方なのだろうと思います。プロフェッショナルにもいろいろな方がいますが、ザ・専門職というと「研究室内で黙々と謎の機材を扱い、一般人の理解できない世界の人」みたいなイメージがつい浮かびがちだったりします。

そういう方も実際いるでしょうけれど、著者のように一般人にプロフェッショナルの知識を共有して、正しい理解を広めようとする働き方って素敵ですよね。尊敬しちゃいます!

軽快な文章に吹き出してしまう

続く第2章。

こちらは「体当たりサメ図鑑」と称して著者が対面してきたサメ達をエピソードを交えて図鑑化しています。第1章で基本知識を身につけた上で読むとサメ達に愛らしさを感じ始めるもので、「なるほど」という発見と「すごい!」という感動とが混ざり始めます。そして、第1章に引き続き一つ一つの説明が分かりやすいのです。

説明が分かりやすく読みやすいのは、何といっても著者の文章が軽快で、ユーモア溢れるからなのではと思います。本書ではサメと共に写る著者の写真も随所に掲載されているのですが、どの写真も笑顔!

本当にサメがお好きなんだな、と読んでいるこちらも笑顔になってしまいます。日常に疲れた方にとってもオアシスになる本ではと思います。

特に読んでいて印象深かったのはオオセ(テンジクザメ目オオセ科)というサメについてのエピソード。ここでは「一度食らいついたら離さない『マンキラー』の執念を体験」として、大学生の頃の出来事が記されているのですが、

 ビッターン! ビッターン! ビッターン!

引用元:沼口麻子『ほぼ命がけサメ図鑑』(講談社)

ここのくだりは堪えきれずに吹き出してしまいました。(顛末はぜひ本書にてご確認ください!)

実は私がこの部分を読んでいたのは、新型コロナワクチン2回目接種後15分の待機時間。過去にインフルエンザで副反応があったりと元々不安な気持ちが大きかったのですが、そんな暗澹たる気持ちがすっかり消え、かなりリラックスできました。

環境問題を考えさせる場面も

フカヒレ狙い、あるいは駆除目的のフィッシングなどが増え、サメもその絶滅を危惧される存在となりました。本書を読んでいると、生態系の維持に関しても思いを馳せざるを得ません。

私自身がサメを釣り上げる訳ではないですが、ハチワレ(ネズミザメ目オナガザメ科)のエピソードで出てくる下記のような事実を見ると、環境問題の改善にあたって私に出来ることは残されていそうだ、ということにも気づかされます。

ちなみに、ハチワレがどんなものを食べているのかと、ワクワクしながら解剖し、胃を切開して驚いた。出てきたのは、「FamilyMart」のロゴが入ったビニール袋。小笠原諸島にはないコンビニで、このハチワレはいったいぜんたいどこでこのビニール袋を食べたのか、謎のままだ。

引用元:沼口麻子『ほぼ命がけサメ図鑑』(講談社)

未来のサメ博士への期待も

著者は研究者として大学院などの組織に所属しておらず、また各種メディアの専属記者でもいないようで、フリーランスとしてサメを追いかけ続けているようです。こうした立場がある意味、専門家とコンタクトをとりつつも中立的に情報発信する手助けとなっているようにも思います。

そして、特別コーナーとして「サメ界ミライのエースたち」として、小学生~中学生の有望な子ども達を紹介しています。彼ら・彼女らの自由研究は大人顔負けの専門性を有しており、俄には信じられないほどです!

子ども達のサメ愛によって、人間と他の動物たちの生活を豊かにし、私たち人間がかけがえのない地球にやさしい生き方をする。そんな未来が実現する日も近いのかもしれません。

関連書籍

  • 郡司芽久『キリン解剖記』(ナツメ社):約10年間で30頭のキリンを解剖した若手女性研究者のエッセイ集です。「研究者」という堅苦しい肩書きを忘れてしまうくらい、気軽に読める本です。 キリンの研究をしたい方は是非とも読みましょう。

  • 松原始『カラスは飼えるか』(新潮社):新潮社のウェブ「考える人」で連載された、カラス先生によるカラスにまつわるエッセイを書籍化。こちらも就寝前などの読書にちょうど良いユーモアあふれる一冊です。ちなみに、あまり知られていませんが、著者の松原氏は数学者 岡潔氏のお孫さんです。

最後まで読んでいただき有難うございました!


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