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【書評】昭和初期の暮らしと戦中戦後の厳しい生活を知る!「川滝少年のスケッチブック」を読む

【書評】小手鞠るい、川瀧喜正『川滝少年のスケッチブック』(講談社) 書評

終息が見えないロシア・ウクライナ戦争。2023年からはパレスチナのガザ地区を巡るニュースも加わり、世界情勢の変化に心を痛めている方も多いことでしょう。

日常的な場面では物価などの経済的な変化も気になるところですが、「自分が住む国で実際に戦争が起こったらどんな生活になるのだろう…?」と不安な気持ちになってしまいますよね。

今回は、太平洋戦争を子ども時代に実際に経験した方のスケッチブックを元にした一冊をご紹介します。優しい雰囲気のイラストと文章なので、子どもや読書慣れしていない方が気軽に手に取れる本です。

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こんな方にオススメ

  • 戦時中の暮らしを学びたい
  • 戦前の子どもの遊びや食べ物に関心がある
  • カムカムエヴリバディが好き!

著者の川瀧喜正氏と小手鞠るい氏

本書タイトルにあるとおり、この本は「川滝少年」、つまり川瀧喜正氏の子どもの頃の体験をスケッチに書き起こしたものをベースに物語が展開されていきます。

川瀧喜正氏は、1931年に愛媛県宇和島市で生まれたあと岡山県に移住し、岡山県第一工業学校(現在の岡山県立岡山工業高等学校)在学中に太平洋戦争を体験。その後、新聞紙に4コママンガを描くなど、似顔絵やマンガを描くことが昔から得意な方だったようです。

共著者の小手鞠るい氏は、川瀧喜正氏のお嬢様。1956年に岡山県備前市で生まれ、同志社大学法学部を卒業した後、1992年に渡米し現在もニューヨーク州に在住しています。小手鞠るい氏は児童書などたくさん執筆されており、数々の賞を受賞されています。

柔らかな筆致のイラストに癒されたり戦慄したり

少し丸めの文字に親しみやすいイラストがたくさん掲載されています。

第一部は「伊予の宇和島よいところ 1931~1943」

宇和島の方言や食べ物、お祭りに遊びといった、子ども時代の思い出が満載で、癒されます。私は宇和島出身ではありませんが、祖父母が川瀧氏と同世代ということもあって、その暮らしを想像しながら読み進めました。みな他界してしまったので、今では直接聞くことができない話を、本書を通じて教えてもらっているような気持ちになりました。

第二部は「欲しがりません、勝つまでは 1944~1945」

勤労奉仕や空襲、食糧不足といった、まさに戦中戦後の厳しい生活をイラストとともに綴られています。九死に一生を得た体験も記録されています。

カムカムエヴリバディを思い出させる!

2021年11月1日から2022年4月8日にかけて放送された、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」をご存じでしょうか?本書を読んでいて、ページをめくる度に思い出されたのはこの「カムカムエヴリバディ」の世界でした。

なぜこの「カムカムエヴリバディ」を思い出したかというと…

  • 川瀧喜正氏のお母様のお名前が「安子」
  • 共著者のお名前が「るい」
  • 岡山県での戦争体験が描かれている

「カムカムエヴリバディ」は、安子、るい(娘)、ひなた(孫娘)の家族三世代の物語で、ラジオ英語講座が始まった1925年から2025年までの100年間を描いています。そして、本作は大きく3つのパートに分けられており、安子編は岡山、るい編は大阪、ひなた編は京都を舞台に物語が展開されてゆくのです。

「カムカムエヴリバディ」は私が初めてハマったNHK連続テレビ小説でしたので、「安子編の世界だ~~!!」と内心かなりドキドキしながら読み進めちゃいました!

岡山無警報空襲

「カムカムエヴリバディ」でも描かれ、本書でも言及されていたのが、岡山無警報空襲です。

 このときの空襲は真夜中におこなわれたため、逃げ遅れて亡くなった人も多かった。
 死者の数は、千七百二十五人。負傷者は、九百二十七人と報道されていたが、実際にはもっと多かったのではないだろうか。
 焼け落ちた家は、二万五千百九十六戸。これは岡山市内の家屋の約六十六パーセントに当たる被災者の数は、十万四千六百六人。

引用元:小手鞠るい、川瀧喜正『川滝少年のスケッチブック』(講談社)

なかでも、たくさんの犠牲者を目の当たりにした体験は、呼んでいるこちらも苦しくなるものです。実は、私の祖父は1945年3月10日に起きた東京大空襲を経験しています。祖父も当時いろいろつらい思いをしたのだろうな…と考えずにはいられませんでした。

私は、岡山の空襲については「カムカムエヴリバディ」を通して初めて知りました。きっと他にも、現代の私たちにその記憶が引き継がれていない悲惨な出来事が世の中にはたくさんあるのでしょう。

イラストという形で、老若男女問わず誰でもその記憶にアクセスできるのはとても良いことだと思います。実際に体験された方が記録に残してくださることで、過去の歴史における反省点を考えるきっかけにもなります。

そして、「戦争は嫌だ」という思いを人類がみな持つことで、悲しい出来事が減っていくのでは、と願っています。

関連サイト

カムカムエヴリバディのオンデマンド配信はこちらです!

関連書籍

  • 小手鞠るい『ある晴れた夏の朝』(偕成社):2018年に全国学校図書館協議会・選定図書、2019年に小学館児童出版文化賞を受賞した作品。日本人作家である小手鞠るい氏がアメリカ側の視点で太平洋戦争を描いた物語です。英文版も出版されています。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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