今回は、小説が大好きな方に是非とも読んでいただきたい一冊をご紹介します。
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2021年本屋大賞の候補作にも選出され、ヤングエースでコミカライズ化されたりなど若者から特に支持を得ている本作。
特設サイトでは、物語の舞台となっている町がイラスト化されていて、とっても分かりやすい!カラテカの矢部太郎さんも4コマ漫画で感想を寄せています。
こんな方にオススメ
- 活字中毒の方
- ファンタジー小説が好き!
- 冒険活劇も好き!
- ミステリーも捨てがたい!
読もうと思ったきっかけ
深緑野分氏の前作、『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)を読んでこの著者の作品をもっともっと読んでみたいと思ったのがこの本を手に取ったきっかけです。
この『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)は、第二次世界大戦終戦直後におけるベルリンで起きた事件を軸に物語が展開します。こちらの作品、ミステリー的要素を多分に含みながらも、どこかお茶目な会話も交わされていて、緩急の付け方が絶妙なのです!
なんといっても、作中にはエーリヒ・ケストナーの『エーミールと探偵たち』(岩波書店)など著名なドイツ文学へのオマージュが随所に感じられ、作者の深緑氏の本への愛をひしひしと感じさせるのです。「この作者は本当に本が好きなんだろうなぁ・・」と思っていたところでしたので、「この本を盗む者は」というタイトルに猛烈に惹き付けられたのでした。
今回ご紹介する『この本を盗む者は』(KADOKAWA)は、第160回直木賞の候補作として選出され、2019年本屋大賞第3位、第9回Twitter文学賞(国内編)第1位を受賞するなど、広く若者から評価を得ています。
あらすじ
読長町(よむながまち)の御倉深冬(みくらみふゆ)は、全国に名の知れた書物の蒐集家の御倉嘉一(みくらかいち)の曾孫。
この御倉嘉一が大正時代からこつこつと集め続けた本のコレクションは御倉館(みくらかん)へ保管され、街の住人が自由に出入りして蔵書を楽しんでいた。しかし、嘉一の死後、その娘たまきはある日稀覯本の一部、約200冊が書架から忽然と消え失せていることに気付く。これを受け激昂したたまきは御倉館を閉鎖してしまった。
平穏が訪れたかに見えた御倉家ではあるが、たまきの死後に不可思議な噂が流れる。その噂とは、「たまきは愛する本を守ろうとするあまりに、読長町と縁の深い狐神に頼んで、書物のひとつひとつに、奇妙な魔術をかけたのだ」ーー
翻って現代。深冬は父あゆむの入院によって叔母の世話をすることとなった。ご飯を渡そうと御倉館を訪れた深冬は、眠りこける叔母の手の中に赤いインクでこう書かれた紙を目にする。
この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる
突然現れた白い髪の少女、真白(ましろ)とは? 御倉館から奪われた蔵書の行方とその犯人とは!?
登場人物
主人公とその家族
御倉深冬(みくらみふゆ)
主人公。御倉嘉一の曾孫。御倉館を営む御倉の一族であることによって、周囲から好奇の目で見られることに嫌気が差している。本を読むのは大嫌い。
御倉の人間に生まれてよかったことなんて、ひとつもない。さっきだって、知りもしない先輩にいきなり話しかけられて文芸部に入れとか言われるし。あたしは本なんか好きじゃない。読みもしない。大嫌いだ。
引用元:深緑野分『この本を盗む者は』(KADOKAWA)
御倉あゆむ(みくらあゆむ)
深冬の父で、嘉一の孫。柔道の道場を経営している。妻、深冬の母を病気で亡くし、深冬と2人で暮らしている。全治一ヶ月の事故に遭い、入院中。
夜、気分良く川沿いの堤防を自転車で走っていたら、物陰から猫が飛び出してきた。無類の猫好きでもあるあゆむは慌ててハンドルを切り、自転車ごと堤防から落下した。
引用元:深緑野分『この本を盗む者は』(KADOKAWA)
御倉ひるね(みくらひるね)
深冬の叔母で、あゆむの妹。深冬によれば、その名に違わず「昼寝をするために生まれてきた」と言ってよいほど、とにかく寝て、寝て、寝まくる。
ひるねはソファに腰掛けた状態で上半身をローテーブルに突っ伏し、軽くいびきをかいて眠っていた。顔の下に分厚い台帳が敷かれているのが見え、このままではよだれで汚すに違いないと、深冬はひるねにかまわず台帳を引き抜いたーー枕を失ったひるねが頭を打った音がしたが、いびきは続く。
引用元:深緑野分『この本を盗む者は』(KADOKAWA)
御倉たまき(みくらたまき)
嘉一の娘で、あゆむ・ひるねの母。所蔵する本への愛情が強く、部外者を御倉館に入れることに頑なに拒否する。
幼い頃、大好きだった年上のお姉さんを御倉館に連れてきて、祖母からこっぴどく叱責された時の、足の裏と胃のあたりが冷たくなる感覚が甦り、両手をみぞおちに当てた。
引用元:深緑野分『この本を盗む者は』(KADOKAWA)
謎の少女
真白(ましろ)
御倉館から本が盗まれると登場する、深冬をよく知る少女。
声を限りに深冬は叫び、後退って尻餅をついた。少女は幽霊だと思った。何しろ物音も気配もなく突然姿を現したし、肩にかかるくらいの髪は、雪のように真っ白だったから。
引用元:深緑野分『この本を盗む者は』(KADOKAWA)
読みどころ
本の呪い(ブック・カース)のルール
本が盗まれるたび、呪いが発動されて深冬は物語の世界に閉じこめられてしまいます。
発動条件や解除条件、発動中の変化などルールを把握するのに四苦八苦する深冬を時に真白が助け、泥棒を捕まえるまでの展開にドキドキハラハラしちゃいます!
真白の存在
真白とは、いったいどんな存在なのか?
本が盗まれた時にだけ登場し、大きな白い犬にも変身する不思議なキャラクターです。そして、深冬のことをよく知っている風でもあり、最後まで目を離せません。
御倉家の謎
そもそも本の呪い(ブック・カース)とは何なのでしょうか?
こうした呪いは御倉館にのみ施されているようで、御倉家の過去と深いつながりがありそうですが、さて!?
感想
第一話「魔術的現実主義の旗に追われる」では、目まぐるしい場面展開とファンタジーあふれる世界観が、とても躍動的に書かれています。アニメ化してほしいシーンがたくさん!少し森見登美彦氏の世界観と近い印象を受けました。森見氏が本書を推薦しているのも頷けます。
第二話「固ゆで玉子に閉じこめられる」はその名のとおり、ハード・ボイルドな物語の世界に入りますが、どこかコミカルな場面もしっかり組み込まれた甘辛ミックスの展開にくすりとしてしまいます。
続く第三話から本作はシリアスさを帯びて発展。第四話、第五話での伏線回収により、謎が解明されてゆきます。これこそミステリーの醍醐味!ファンタジーにアドベンチャー、ミステリーがそれぞれ絶妙に織り込まれ、満腹感のある小説でした。
関連書籍
- 深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房):第160回直木賞の候補作として選出され、2019年本屋大賞第3位、第9回Twitter文学賞(国内編)第1位を受賞。ナチス・ドイツが敗れ米ソ英仏に統治されていた時期のベルリンで、ある事件が起きて――。
- 森見登美彦『熱帯』(文藝春秋):「この本を最後まで人間はいないんです」。単行本のカバーを外すと、読者も物語の世界に引き込まれてしまうしかけが施されています。
最後まで読んでいただき有難うございました!
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