実家に久々に帰省すると、親の元気な姿にホッとするもの。住み慣れた場所で羽を伸ばす方もいるでしょう。あるいは、家族に家事を頼まれて全く休養できない、なんて方も?いずれにせよ、ホテルなどへの宿泊などと異なり、実家を「自宅の延長」と捉える方は少なくないことと思います。
私はずっと、実家を「自宅の延長」として考えていました。しかし、一人暮らしを始めて8年後のある日、祖父の体調が悪化。続いて、父の体調も安定せず健康に不安が残る状態になってしまいました。
これを機に実家で家族のサポートをすることに決めて約7ヶ月後、祖父が他界。父の体調は引き続き安定せず、要介護1との介護認定を受けることになりました。
母は父のサポートと祖父の相続などで手一杯。
同居していた祖父の膨大な書籍棚や私物は、
一体どうすれば良いのだろう…?
十数年前に天国に旅立った祖母の私物は…!?
この頃から、私にとって実家とは「自宅の延長」ではなく「過去の自宅」と考えるようになりました。実家にあるモノは、過去の遺物。未来に残していくべきかどうか精査する時が来たのです。
父の健康状態を考えると、祖父の遺品整理だけでなく父母のモノも減らさなければ転倒リスクなどの危険が伴います。30年以上も大家族で暮らした実家だけあって、モノの貯まり具合も半端ない状況でした。
今回ご紹介するのは、休日や朝の余暇時間を使って片づけに奔走中のある日、手に取った本です。この本は、私のように切羽詰まった状況で読むのではなく、年代問わず、時間の猶予があるうちに頭の片隅に入れておきたい内容です!
こんな方にオススメ
- 遺品整理に追われている
- 両親の体力低下や健康悪化により転倒リスクを心配している
- 両親に生前整理をしてもらいたいが、なかなか動いてもらえない
みんな、生前整理に乗り気ではない
生前整理というと、自分が亡くなった後、残された家族が困らないために整理をすることだと思っている人が多いです。そして、必ず「死んだら捨ててくれればいい」と言います。子どもから生前整理の提案をすると、「早く死んでほしいの?」とイメージも悪い。しかし、生前整理は親の残された人生をよりよくするためにするもので、「これからの人生をどのように過ごしたいか?」「亡くなった後、子どもにどのように片づけてほしいか」の確認作業になるわけです。そのことを親にわかってもらう必要があります。
引用元:永井美穂『日本初の片づけヘルパーが教える親の健康を守る実家の片づけ方』(大和書房)
片づけを始めた時点で祖父はすでに他界していましたが、生前に「残してほしいものリスト」を書き残していました。つまり、それ以外のものは基本的にすべて処分してしまっても良いということです。
しかし、この故人の私物を処分するというのは、残された家族にとってはなかなか大変なのです。4桁は確実にある書籍の中には明らかに祖父の思い入れが強そうな品がありますし、他の家族も「この本は自分が読みたい」などと遺品を分割するための調整が発生します。
1枚1枚に思い出がある写真。一度に整理し、手放すことはなかなか難しいものです。そこで、思い出話をしながら、聞きながら、一緒に整理すると、親は楽しかった思い出を共有できたと感じ、徐々に手放してくれるようになります。
引用元:永井美穂『日本初の片づけヘルパーが教える親の健康を守る実家の片づけ方』(大和書房)
また、写真で明るくほほえむ祖父母の家族写真を見て涙があふれ、片づけが捗らないなんてことも。「こんなに素敵な写真があることを知っていたら、出棺の際に棺に納めたり遺影に選んだかもしれない…」「生前に写真を見ながらもっといろいろな会話ができたかもしれない…」と、大切な家族であるがゆえに後悔の念が生じてしまうのです。
物理的に体力・時間を必要とするだけでなく、精神的に大きな負担がかかる作業ということです。
特にモノが多い父親の私物をどうするか
これからのことを考えると、すでに他界した祖父はともかく健康状態が不安定な父親については、せめて要介護状態(要介護2以上)になる前に、生前整理を少しずつ進めてもらいたいところ。しかし、遅々として進まず。父(チチ)だけに…。だが、しかし…!!
実家を「片づけてほしい」と思っているのは、実は子どもだけです。親は別に「片づけたい」とは思っていません。子どもはそこをはっきり知る必要があります。
引用元:永井美穂『日本初の片づけヘルパーが教える親の健康を守る実家の片づけ方』(大和書房)
皆さんのなかにも、自分の両親に「家の中を片づけよう!」と話したけれど動いてくれない…という方は多いのではないでしょうか?実際、私の場合もそうでした。これでは、転倒リスクなど健康上の心配は晴れません。そこで、まだ体力のある母を巻き込みながら、片づけを習慣化するために「週末に10分くらい一緒にやらない?」と母を誘うことから始めました。
父親に対して頭ごなしに、「片づけて」と言うのはタブー。なぜなら、一般的に父親は母親に比べてプライドが高く、威厳を保ちたい人が多いからです。プライドを傷つけず、ほめながら片づけるように促すのがコツ。
引用元:永井美穂『日本初の片づけヘルパーが教える親の健康を守る実家の片づけ方』(大和書房)
(中略)
さらに、娘と母親とで共用部分や母親の部屋を片づけ始めると、競争意識が働くのか、父親が片づけるケースがあります。片づけのいい連鎖を作るのもひとつの方法です。
そして、不要品はフリマアプリに出品するようにしました。父には「もし、いらないものがあったら、試しに出してみようか?お金になるかもしれないし」と声をかけ、着実に実績に繋げていきます。
「すごいね、売れたよ!買ってくれた人、喜んでくれたよ!良かったね!」と話しかけた後、父が自室を眺め回すその視線の動きが忘れられません。そして、父は読み終わった雑誌などを以前よりも自主的にゴミ出しするようになりました。
そんなときに有効な魔法の言葉があります。その言葉は、「ちょうだい」。一見、横暴な言葉のように聞こえますが、意外に効果を発揮します。ある方は、座布団が何十枚も実家にあり、スペースも取っているし、冠婚葬祭で使うこともなくなったので、処分したほうがいいと思いましたが、あつらえた座布団を捨てたくなかったお母さんに、「ちょうだい」と言ってみたそうです。すると、「いいよ!」と喜んでくれたそう。持ち帰って数枚は使っていますが、残りは処分したそうです。
引用元:永井美穂『日本初の片づけヘルパーが教える親の健康を守る実家の片づけ方』(大和書房)
自分が部屋にため込んだモノを受け取って、喜んでくれる人がいる。この流れが、片づけスイッチオンのきっかけになったようです。
日本初の片づけヘルパーによる実用的な一冊
さて、私の実経験を踏まえながら紹介してきた本書ですが、最後に著者経歴と書籍の体裁についても触れておきましょう。
著者は日本初の片づけヘルパー、永井美穂氏です。認知症が進行した祖父の最期に、怖くて手を握ることができなかったという永井さん。その後悔から、10年勤めたテレビ制作会社を退社し、介護福祉士として10年間、高齢者の在宅介護に従事します。
その後、2009年より日本初の「片づけヘルパー」となって、10年以上活動を続けているとのこと。実用的なアドバイスたっぷりの本書の著者として納得の経歴です。役立つ内容もさることながら、159ページと気軽に読めるボリュームでイラストも豊富、さらに文字も大きめです。
おそらくこれは、日々忙しいながらも両親の生前整理や遺品整理に急ぎ取り組まざるを得ない60代を読者のターゲットとしているからではないかと感じました。定年後も働き続けている方や、介護を担っている方、日々お忙しいですよね。それに、老眼で読書に少し苦手意識が増してきた、という方も多いですよね。
実際、この「片づけヘルパー」の利用者の声が巻末に掲載されているのですが、すべて60代から80代の方です。おひとり様で、自身の終活を視野に片づけを始めた方の声も本書に掲載されています。
したがって、本書は特に60代以上の方にとって嬉しい実用書となることでしょう。私自身は30代なのですが、実際に生前整理や遺品整理の必要を感じない場合でも、仕事に育児にと毎日やることの多いすべての世代にとって有益な一冊となることと思います。
永井美穂氏のオフィシャルサイトはこちら。
関連書籍
- やましたひでこ『1日5分からの断捨離―モノが減ると、時間が増える』(大和書房):お祭り気分で一気にお片付けするのが性に合わない方は、こちらの本が大変参考になると思います。実際、私もこの本を読んでからなんと6ヶ月以上、毎日の断捨離を継続できています!千里の道も一歩から。断捨離は毎日5分から進めていきましょう。記事にしましたので宜しければご覧ください。
- やまぐちせいこ『ミニマリスト、親の家を片づける』(KADOKAWA):ミニマリストが親の家を片づけた実体験を追体験できる一冊です。本書も今回ご紹介した『日本初の片づけヘルパーが教える親の健康を守る実家の片づけ方』と同様、ただモノを捨てるというのではなく両親が快適に生活できる仕組みに言及していて、学びが多いです。
最後までお読みいただき有り難うございました!
♪にほんブログ村のランキングに参加中♪