2020年以降、新型コロナウィルス感染症が世界的に広がったことで、メンタル不調を引き起こす患者が増えました。
人と会うことが制限され、会話量も必然的に減り、経済的な不安も大きい。塞ぎ込む毎日を過ごしていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
実際、日本でも新型コロナウィルスに関する報道が大々的に報じられたころ、精神疾患を抱える患者さんの多くがコロナに関する不安を打ち明けていたという事実があります。
うつ病もその症状は人によってさまざまで、新型うつ病という病名もここ10年ほどですっかりメジャーになりました。
新型うつ病とは、『働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳』によれば以下のとおり。
このごろ聞かれる「新型」うつ病という名称はマスコミ用語です。
(中略)
現代風な気分障害の診断・治療において、第一の課題になっているのは、多少活発だという程度の軽躁状態です。
(中略)
第二の課題は、不安症状が強いうつ病や気分障害です。
(中略)
最近の気分障害の課題の第三は、他罰性が強いことです。
(中略)
第四の課題は、ごく軽度な発達障害の要素を背景に持ち、適応障害を起こして、抑うつ状態を呈するケースです。
引用元:『働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳』「Q3:いわゆる新型うつの理解と対策は?」
新型うつ病の場合は若者に多いとされ、自己中心的かつ精神的に未成熟である点が特徴的と言われています。
しかし、2020年以降のパンデミックを受けて、将来への不安、経済的な悩み、未解明の感染症への恐怖など、精神的に強い影響を受けた方はたくさんいらっしゃるでしょう。
現代はまさに「コロナうつ」とも呼ぶべきで、「コロナをきっかけに強い不安を抱える人」が世界中にいらっしゃいます。急激に訪れた社会的変化を思えば、これは決して異常なことではありません。
今回は、新型コロナウィルス感染症をきっかけに気持ちが塞ぐ毎日を送る方々にオススメの一冊、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』をご紹介します。
読み手に優しく寄り添う文章が心地良い
本書は次のように構成されています。書名の副題「精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ」と、まさにリンクする目次内容です。
精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』の目次
- step1まずは気持ちを落ち着かせる
仕方ない、今夜はダメな自分とトコトン付き合うさ
(不安な夜をやり過ごす方法) - step2ひとりの時間を味方につける
誰ともしゃべらない一日でも、それなりに楽しく
(ぼっちの昼間を紛らわす方法) - step3自分をケアする
自分に優しく、自分に甘く
(クタクタの心身をいたわる方法) - step4思考法を変えてみる
明るい未来はこう摑もう
(ネガティブな自分にさよならする方法) - step5ひとりだけど、ひとりじゃない
小さく達成、大きく満足
(猫みたいに楽に「自分」を生きる方法)
著者は精神科医です。精神科という分野における医者というのはさぞかし強いメンタルを備えているのかと思いきや、なんと、自分自身のヘタレさに冷や汗が出ると述べています。
救急車が到着すると、病棟にいるスタッフは全員ダッシュ。大切な命がかかっているのだから当然です。僕もダッシュ。しかし、僕が駆け出す方向は、なぜかトイレ。「救急車はそっちじゃない!」といつも怒られていたものです。救急車×緊張でお腹が猛烈に痛くなり、トイレが我慢できなくなるのです。慣れない間はずっとそうでした。
引用元:鹿目将至、鳥居りんこ『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(双葉社)
「現職の精神科医でもそんな過去があるんだ!」と思うと、不思議と勇気が出ます。完璧な人間はいない、ということなのでしょう。他にも個人的なエピソードが盛り込まれていて、いわゆる「先生」という敷居の高さはあまり感じさせません。
一方で、医学・精神医学の門外漢でも理解しやすい文章で医学的な解説が加えられており、読み手に優しく寄り添う良書だと思います。
ハッピーが続く魔法のおまじない「良いぞ~!」
本書を読んでいて共感したのは、コロナ流行が加速化するなかで結婚式を挙げる予定だった娘へ、彼女のお父さんがかけた言葉です。
「そうか、そうか。マキちゃん、これは、良いぞ~!」って。
号泣している愛娘に向かって「良いぞ~!」ってどういうことでしょう。
お父さんは彼女にニコニコ笑いながら、こう続けたといいます。
「マキちゃん、楽しみがずっと続くな。ずっと花嫁の父でいられるから、お父さんも嬉しいな。良いぞ~!」って。
(中略)
つまり、どの方向から見つめるかによって、同じものなのに、見え方は真逆とも言えるほどに変わってしまうということなんでしょう。どんな出来事も、自分の受け取り方ひとつで、良いようにも悪いようにも転がってしまうってことを、彼女のお父さんから僕も学んだ気がします。
引用元:鹿目将至、鳥居りんこ『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(双葉社)
実は、このコロナ禍でステイホームが推奨されるなか、私自身も「これは学びを深めるチャンスでは!?」と思い至り生活改善に取り組みましたので、この記述には共感できる点がありました。
当時、私は英語の勉強をちょうど始めたばかりの頃でして、在宅勤務によりまるまる浮いた通勤時間を「語学スキルの向上に活用しよう!」とポジティブな気持ちに転換することができたのです。
きっかけはコロナウィルスの流行というネガティブなものでしたが、このころ始めた英語の勉強はしっかり習慣化され、2022年現在でも継続しています。勉強の成果か、英語のニュースも少しづつではありますが聞き取れるようになってきました。
まさに、自分の受け取り方ひとつで未来は変わる、ということを体験したのです。
本書のなかでは他にも、発想の転換でポジティブな気持ちになる一節がありました。
何をやっても長続きしない僕。挫折だらけの僕……実は長らく、コンプレックスでした。
でも、ある人にこう言われたんです。「あら、鹿目君って『経験豊富』なのね」って。
引用元:鹿目将至、鳥居りんこ『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』(双葉社)
「○○一筋」という方は実直で忍耐強く、そのスキルの高さは三日坊主と比較するまでもありません。しかし、言われてみれば、広く浅く色々なことに手を出すタイプというのは経験豊富とも言えるわけです。なるほど!
今しんどい状況下で悩みを抱えている方も、視点を変えれば幸せへのきっかけが得られるかもしれません。一人で悩むと堂々巡りになりがちなので、まずは友人や家族と話したり、話を聞いてくれる民間団体などを活用するのも良いのではと思います。
こころの耳
本記事でも引用した『働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳』は、厚生労働省委託事業(ポータルサイト運営)として一般社団法人日本産業カウンセラー協会が受託して開設しているサイトです。
職場のメンタルヘルスを含めて各種相談窓口の情報も掲載されていますので、お悩みの際にはご活用いただけると思います。
最後まで読んでいただき有難うございました!
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