公認心理師の資格取得にあたって必要な科目は、合計25科目(52単位)となっています。資格取得を目指す学生の多くは、伝統的な基礎・応用分野の心理学やカウンセリングに関する勉強をして、公認心理師になるのだと想像するかもしれません。
しかし、実際には、上述したような基礎・応用科目およびカウンセリング科目の単位を取得するのはもちろん、公認心理師にまつわる法制度や職責といった実務的な側面に関する科目や、人体や疾病に関する基礎知識も必須とされています。
そう、人体に関する知識と疾病に関する知識も必要になります。医学や看護の領域もカバーする必要があるということです。
放送大学では、「人体の構造と機能ー人体の構造と機能及び疾病Aー」と「疾病の成立と回復促進ー人体の構造と機能及び疾病Bー」が該当する科目です。私は、まず前者の「人体の構造と機能ー人体の構造と機能及び疾病Aー」で単位を取得したあと、後者の「疾病の成立と回復促進ー人体の構造と機能及び疾病Bー」を履修しました。
▼「人体の構造と機能ー人体の構造と機能及び疾病Aー」についての記事はこちら↓
前者は、生物学の基礎知識を深めていく方向で学びを深めるのに対して、後者は、医学・看護学の初歩の位置づけに近く、私にとっては未知の世界が広がっていました。本科目は導入科目であり専門科目とはされていませんが、とても難しかったです。
このため、特に看護系の基礎知識がないという方は、両科目を同時に履修するのは結構キツいのではと思います。
よって、生物学的な基礎知識があるならば「人体の構造と機能ー人体の構造と機能及び疾病Aー」をまず受講してから次学期に「疾病の成立と回復促進ー人体の構造と機能及び疾病Bー」を受講、『家庭の医学』といった本やテレビ番組に馴染みがあるという方は、「疾病の成立と回復促進ー人体の構造と機能及び疾病Bー」をまず受講してから次学期に「人体の構造と機能ー人体の構造と機能及び疾病Aー」を受講、と履修時期をずらすことをオススメします。
「疾病の成立と回復促進ー人体の構造と機能及び疾病Bー」は、履修前に確認したシラバスの情報から、私には難しそうな雰囲気が多大に感じられました。
が、ここ数年、新型コロナウィルス感染症の蔓延といった社会的影響の大きさもありましたし、家族が体調を崩したり病気になったりという場面にも数多く立ち会ったことで、基本的な疾病に関する知識を得たいと思い、履修することにしました。
今回は、疾病に関する基礎や代表的な疾病の特徴およびその経過について学ぶ「疾病の成立と回復促進ー人体の構造と機能及び疾病Bー」の印刷教材(テキスト)をご紹介します。公認心理師取得にあたって履修必須の科目です。
放送授業では、一般人が容易に見ることができない病院内部の設備紹介や細胞組織図なども確認することができます。
書籍は全国の書店などで購入できます。放送大学生でない方も、本科目の講義はBS放送などのテレビで視聴可能です。詳しい視聴方法は以下をご参照ください。
本講座の基本情報
本講座「疾病の成立と回復促進ー人体の構造と機能及び疾病Bー」は、放送大学で開講されている科目です。
- 2021年度開設(2025年度に改訂予定)
- 放送授業(テレビ配信)
- 生活と福祉コースの導入科目
具体的なシラバスはこちらからご参照ください。
放送授業はテレビで公開されており、書籍はAmazonほか各書店でお買い求めいただけます。各地域におけるテキスト取扱書店は下記をご参照ください。
こんな方にオススメ
- 病気に関する基礎知識を学びたい
- 臨床心理士や公認心理師を目指している
- 健康診断の結果で気になる点があった
目次
本書の目次は下記のとおりです。全15回の放送授業に沿った章立てとなっております。
1 イントロダクション 細胞・組織障害と再生・修復
2 基本的な病変の発生機序
3 健康状態を脅かす微生物と生体防御
4 疾病に対する医療
5 神経機能の障害
6 呼吸機能の障害
7 循環機能の障害
8 造血機能の障害
9 免疫機能の障害
10 消化機能の障害
11 栄養バランスの障害
12 排泄機能の障害
13 内部環境調節機能の障害
14 運動機能の障害
15 生殖機能の障害
感染症とは
さて、2020年より世界的に広まった新型コロナウィルス感染症について考えてみます。そもそも感染症とは、どう定義されるのでしょうか?
感染症とは、微生物が人の体内に侵入して増殖し、発熱や下痢、咳や痰といった何らかの症状を起こしている状態である。感染症の成立には、微生物を含む感染源、感染症を発症する人(感受性宿主)、感染源が感受性宿主まで到達する感染経路の3つが必要である。
引用元:岡田忍、佐伯由香『疾病の成立と回復促進〔改訂版〕: 人体の構造と機能及び疾病B(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)
パンデミック宣言が出た頃、官公庁が「3つの密(密閉・密集・密接)を避けましょう!」と各種メディアで何度も繰り返していたことを思い出します。これは感染症の成立要件の一つ、感染経路に特に焦点を当てた施策といえるでしょう。
感染源を撲滅することは困難ですし、人がいない世の中を前提とするのも非現実的、個人レベルで対策できるとしたら感染経路(+手指の消毒)だ!、ということかもしれません。感染症といえば、このように私は空気(飛沫核)感染をすぐ思い浮かべます。こうした感染は横方向で一度に多くの人に感染源が伝播することから、水平感染と呼ぶようです。
一方で、母から子のように次の世代に垂直に伝わる感染経路は、垂直感染と呼ぶそう。エイズ(acquired immunodeficiency syndrome, AIDS)が垂直感染の感染症としてよく知られていますね。感染症はインフルエンザ、新型コロナウィルスなどの空気感染だけではないことをあらためて再確認することができました。
垂直感染の経路は、母親が感染した微生物が胎盤を介して胎児に感染する場合(子宮内感染)、分娩時に産道で感染する場合、母乳や接触を介して感染する場合に分けられる。
引用元:岡田忍、佐伯由香『疾病の成立と回復促進〔改訂版〕: 人体の構造と機能及び疾病B(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)
家族の病気に対する認識が変わった
「人体の構造と機能ー人体の構造と機能及び疾病Aー」を履修したときには家族の病気のことを思い浮かべて辛い気持ちになったものですが、今回の「疾病の成立と回復促進ー人体の構造と機能及び疾病Bー」を履修したときも同様で、しばしば悲しい気持ちになりました。
▼「人体の構造と機能ー人体の構造と機能及び疾病Aー」についての記事はこちら↓
ただ、「人体の構造と機能ー人体の構造と機能及び疾病Aー」が人体の構造的な側面を解説するのに対して、「疾病の成立と回復促進ー人体の構造と機能及び疾病Bー」では代表的な疾病を取り上げた説明がなされます。各疾病の発生原因や症状、経過、治療法を詳しくまとめてあり、これまで抱いていた疾病に対する印象が変わるという体験が何度がありました。
たとえば、家族が現在治療中の「変形性関節症」という疾病についてです。
変形性関節症では、関節軟骨の変性に伴い、二次的に関節を形成する2つの骨の関節面に変形が生じ、円滑な運動が阻害される。日常、多く見られる関節障害の1つで、慢性の経過をとりながら、進行性である。特に荷重のかかる股関節、膝関節に好発する。
引用元:岡田忍、佐伯由香『疾病の成立と回復促進〔改訂版〕: 人体の構造と機能及び疾病B(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)
原因には一次性と二次性のものとがある。一次性のものはある素質を基礎として、関節の老化現象に機械的影響が加わって発生するものである。二次性のものは関節形態の異常、外傷、代謝異常など明らかな原因によって発生したものを指す。わが国では大部分が二次性で、女性に多い。
変形性関節症を治療中の家族は、多くを語りません。「怠惰な生活をしてきたからだ」という批判も何度か耳にしましたし、私自身も少なからずそう考えていた節があります。
実際には、何が発生起因であったのかは分かりません。本書の記述からは、生活習慣が悪いという理由で発生する「なまけ病」であるとは書かれていません。そこで、ハッとしました。
うつ病も、過去には「なまけ病」であるとの認識が世間に広がっていたように思います。「甘えている」「サボっている」などなど。しかし、患者は痛い思い、辛い思いを周囲に理解してもらえない苦しみをいつも感じているのかもしれません。
家族もいま、同様の状態なのかもしれない、と考えさせられました。
健康診断の再検査を受けて
履修開始前に受けた健康診断で、乳がんの再検査が必要という結果が出ました。実は、私は祖母(父方)と母が乳がんと診断されたことがあります。母は再発したので、2回乳がんの治療を行いました。ほかにも、遠い親戚にも乳がんと診断された親族がいました。よって、遺伝的に私が乳がんに罹患するであろう確率が高いことは、日頃から覚悟していました。
「自覚はないけど、本当に乳がんだったらどうしよう…」と内心大きな不安を抱えながら、再検査を予約。そして、再検査の日。医者からは「8mmのしこりがある」と告げられました。ただし、「良性の可能性が高いので経過観察でよいです。来年の健康診断をまた受けてください。自己点検で気になる点がでてきたら、診ます。また来てください」とのこと。
「とりあえずは普通に過ごしていいのか~」とホッとしつつも、もし悪性腫瘍だったらどんな治療が待っているのだろう?と、とても気になりました。そして、再検査の直後に、第15章「生殖機能の障害」が!難しいな~と思いながらも、真剣に読みました。
乳がんは硬い、可動性ある孤立性腫瘍として発見される。臨床的に気づいた時点では2~3cm台となりリンパ節転移をきたしているのが50%である。マンモグラフィーにより触知される以前の段階で発見できる。マンモグラフィーで発見し得る乳がんは1cm径以下で、有転移症例はわずか15%である。加えて非浸潤がんが発見されることもある。
引用元:岡田忍、佐伯由香『疾病の成立と回復促進〔改訂版〕: 人体の構造と機能及び疾病B(放送大学教材)』(放送大学教育振興会)
治療方法はさまざまあり、腫瘍の特徴によって選択されます。この先、罹患するかもしれないし、何もないままかもしれない。有効な治療法が見つかるかもしれないし、困難だという判断になるのかもしれない。
不安な思いはありつつも、これまでよりも覚悟ができたように思います。
関連書籍
- 坂井建雄、岡田隆夫『人体の構造と機能〔改訂版〕: 人体の構造と機能及び疾病A(放送大学教材)』(放送大学教育振興会):生物学的・解剖学的な観点での基礎知識を得たい方は、こちらの一冊が有用です。記事を書きましたので、宜しければお読みください。
- 斎藤清二・野島一彦(著)、繁桝算男(監修)『第21巻 人体の構造と機能及び疾病(公認心理師の基礎と実践)』(遠見書房):公認心理師の資格取得に向けて、より学びを深めたい方はこちらもどうぞ。
最後までお読みいただき有り難うございました!
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