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【書評】残業はやる気の証明?「あやうく一生懸命生きるところだった」を読む

【書評】ハ・ワン(著)、岡崎暢子(翻訳)『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社) 書評

先日も下記の記事でご紹介しましたが、韓国エッセイがアツいです。

今回ご紹介する本はこちら、タイトルからして色々な想像を掻き立てられる一冊。

あやうく一生懸命生きるところだった」です。

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なぜこの本を手に取ったか

コロナ禍まっただ中の2020年から2021年の間、今まで疑問に感じていたけどじっくり考える時間がなかったようなアレコレについて、一人向き合う時間が増えたという人も多いのではないでしょうか?

私の場合は、コロナ禍をきっかけに在宅勤務が導入され、効率的に仕事を進められるようになりました。かつ、通勤時間も減ったことでかなりの余剰時間が生まれました。

こうした時間を使ってたくさん勉強もしましたが、あらためて会社や日本全体に対してこれまで感じていた、閉塞感とも呼べるアレコレを考えるようにもなっていきました。

そして、この本のタイトルです。「あやうく一生懸命生きるところだった」。

厭世観が漂い、かつ闇が深そうなタイトルですが、自分もうっかり口にしたくなる「あやうく一生懸命生きるところだった」。強く興味を惹かれるではありませんか!

同じく韓国エッセイの「私は私のままで生きることにした」で韓国と日本の社会がかなり似た生きづらさを抱えていることに気づいたことも、この本を手に取った理由の一つです。

韓国と日本の類似性については、こちらのページで触れました。宜しければご参照ください。

それでは早速、私の心に響いた一節をいくつか取り上げご紹介していきます。

やる気がなくても働ける

私はあんまりやる気がなく、面倒くさがりな人間です。中学校や高校でも「もうちょっと頑張ろうよ」と指摘されることしばしば。世の中やる気のある人間だけで構成されている訳ではない、という事実が忘れられている気がします。

就職活動でも「社員みんなが輝ける会社」「やりがいある仕事」「若者が成長できる環境」と言った表現が使われていたりしますよね。こういうサイトを見ていると、正直なところ

わたし
わたし

私みたいな人間は、どうやら

ゴミ屑のような存在になってしまいそうだ…

と思ってしまいます…。

どうやら会社はお金のために働く人間ではなく、やる気を持って共に成長しようとする人間を望んでいるみたいだ。
そして僕らは、今日も「やる気の証明」として残業をする。定時退社はやる気ゼロと見なされるから。その結果、会社は成長していくのに、なぜか僕らの給料は成長しない。
共に成長しようって言ったよね? 都合よすぎない?

引用元:ハ・ワン(著)、岡崎暢子(翻訳)『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社)

かつては私もたくさん残業しましたが、自分のキャリア形成に繋がる経験ができた、という思いは少ないです。自分が好きでやっている仕事内容ではなかった、というのも一因だと思います。でも、会社からは「頑張ってるね!」とお声掛けいただくことが多かったです。自分の外ヅラと内面の矛盾がハンパなく、ストレスを感じていました

今はかなり残業が減りましたが、ちゃんと仕事を継続できていますし、考課もまぁまぁです。「やる気がなくても働ける!」ということを人生の早いうちに気付くと、人生における優先事項の時間配分がうまくなるのでオススメです。

さて、余談ですが本書、良質なビジネス書で有名なあのダイヤモンド社より出版されています。しかし、一見して気付く人は少ないかもしれません。なぜかというと、表紙に極めて目立たない文字色、サイズで出版社名で記載されているからです。

わたし
わたし

ダイヤモンド社さん、主張抑えめ?

いやいや、それでもこの本のように売れる本は売れるし、

売れない本は売れないのですよ…。

人生マニュアル

誰でも、前例を調べたり、友人と自分を比較したりして最適な行動を決めようとします。

かなり前のことだが、ある人から面と向かって堂々と質問されたことがある。
なぜ結婚しないのか、当然すべきなのになぜか、と。
でも、何ひとつ答えられなかった。いや、答えたくなかった。相手は悪意もなく、純粋な好奇心から質問したのだろうが、まるで暴力のように感じられたから。

引用元:ハ・ワン(著)、岡崎暢子(翻訳)『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社)

私は20代の頃、「どうして彼氏いないの?」とよく聞かれました。そして、「いい人、紹介するよ」。恋人がいないということが、一般常識からはずれているかのようなお言葉を頂戴した若者、多いのではありませんか?

ただ、自分だけがこういう仕打ちを受けていたということではありません。逆に、私が相手に常識を押しつける場面もありました。

友人の一人は、20代の頃にプロポーズを受けたものの、その申し出を断ったそうです。そして、お相手のことが嫌いな訳ではないとも。「えっ、どうして結婚しないの?」と思わず感じましたが、その判断理由はやはり人それぞれで。当時の日本では、結婚後に仕事を辞める女性がまだまだ多くいました。

結婚するということは、その先の自分のキャリア(仕事、出産、育児、介護、生涯年収)を大きく揺さぶる事件です。彼女はこうした重要判断が現時点の自分にはできないと考え、お断りしたようでした。

新型コロナワクチンの第一回接種についても、似たようなケースが見られたことでしょう。

ワクチンを接種しないという判断をした方、「どうしてワクチン受けないの?」と圧のある質問をされたのではないでしょうか?自分で考え、自分でご判断されたのなら、その決断は尊重するのが良いと思います。

いずれにせよ、私は「受けたいけど受けられなかった派」。「若い人も重篤化することがあるんだよ。副反応が不安かもしれないけど、余程のことがなければ受けた方が良いよ。私が病院探してあげようか?」という質問への答えとしては、「どうしてって…、ワクチン不足で30代に回ってこないからですよ。病院も予約の殺到で疲弊しているようですし、気長に待ちます」。

自分の価値観を超えた領域に答えが存在していることを、対話を通して知るのです。

自尊感情

自尊感〔self-esteem、自尊感情、自己肯定感〕とは、「自我尊重感を縮めた言葉で、自身を愛し、尊重する心。自身の価値を信じて満足しているかについての自らの評価」のことらしい。自尊感が低い人ほど、劣等感を感じやすく、自戒の念に陥りやすいという。

引用元:ハ・ワン(著)、岡崎暢子(翻訳)『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社)

法輪(ポンニュン)和尚という韓国の著名な仏教僧の言葉が心に響いた。
自尊感が低い人たちは、自身を過大評価し、素晴らしい人間だという幻想を持っている。この幻想と現実のギャップが大きいほど、悩みも大きくなるのです。

引用元:ハ・ワン(著)、岡崎暢子(翻訳)『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社)

森田療法を提唱した日本の精神医学者、森田正馬の思想を思い出します。あがり症を克服した佐藤健陽氏も、自分の理想と現実のギャップが大きければ大きいほど悩みが深くなると指摘しています。

理想の自分というのは、自尊心(プライド)に現れるのかもしれません。「○○大学を卒業」「社会に不可欠な○○という仕事」「キャリアを積んで年収○○万円に到達」。

実現していれば自信に繋がっていることでしょうし、未到達であれば自分はそれにふさわしい可能性を潜在的に秘めていると考えることでしょう。

いずれにしても自尊感が低い人というのは、「そんな自分がこんな不遇を受けている」「当然得られるはずの特権がない」という不満があるのかもしれません。ときには、飲食店で声を荒げるお客様もいらっしゃるのではないかと。

何かを失うと、何かを得られる

何かを失ったときは失ったことに気を取られて、何かを得ていることに気づかない。
反対に、何かを得ようとするときは、それに集中するあまり失っていることに気づかない。

引用元:ハ・ワン(著)、岡崎暢子(翻訳)『あやうく一生懸命生きるところだった』(ダイヤモンド社)

引っ越し1ヶ月前に読んで、気持ちを切り替える良いきっかけとなりました。

私はこれまで住んでいた部屋に不満があって引っ越しを決断したのではありません。大家さんも良い方でしたし、いつまでも居心地よく生活できたと思います。

だから、諸事情により、自分が大好きだった家を離れると決断したときはとても寂しかったです。でも、「新しい生活には新しい何かが待っている。今まで出来なかったことに取り組む絶好のチャンスなのだ。」とポジティブな気持ちになりました。

コロナ禍にあって不遇を受けている方、何かを失った時というのは何かを得ている時でもあるのです。まずは、前を向いて生きましょう。

関連書籍

  • キムスヒョン(著)、吉川南(翻訳)『私は私のままで生きることにした』(ワニブックス):2022年1月時点で韓国で113万部突破のベストセラーエッセイ。日本でも52万部突破です。韓国も日本に負けず劣らず、いやそれ以上に生きにくい社会なんだなと感じてしまいます。周囲との協調を大切にして、結果的に個人を蔑ろにしてしまいがちな点は、東洋ならではの文化なのかもしれません。 別記事にて書評を掲載しています。

  • 佐藤健陽『あがり症は治さなくていい 大切なことはアドラーと森田正馬に教えてもらった』(旬報社):重度のあがり症に苦しんだ佐藤健陽氏の著書。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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