2024年に大きな話題を呼んだNHK大河ドラマ『光る君へ』。紫式部を主人公に展開されたドラマは、視聴者の感動を呼び日本全体に大大大ブームを起こしましたよね!
『光る君へ』の脚本を担当したのは、大石静氏。過去には、大石静氏脚本で2010年にNHKにてドラマ化され、後に映画化もされた『セカンドバージン』がありました。こちらは大胆なベッドシーンもあり、辣腕プロデューサーと若手キャリアの許されざる恋が、かって社会現象を巻き起こしたものです。
今回は、このドラマ『セカンドバージン』での共演をきっかけに主役同士が交際を始めた(!)という噂もある本作の、小説版をご紹介します。
こんな方にオススメ
- 話題となったドラマの小説版が読みたい
- 飽きずにテンポよく展開されていく物語が読みたい
- 大人の歳の差恋愛を題材にした小説が読みたい
セカンドバージンとは?
急進的に成長し続けている出版社で働く辣腕編集者の中村るい(演:鈴木京香)と、元金融庁で日本の金融市場の発展を願う若き鈴木行(こう)(演:長谷川博己)との17歳差の大人の恋愛を描いた物語です。
それでは早速、この主役の男女2人についてザックリご紹介しましょう。
中村るいはバツイチで、離婚後仕事に邁進したものの恋愛にはご縁がないまま45歳となります。専務として働いている自社、新海社という出版社で、鈴木行の本をベストセラーにしようと交渉を始めたことから、次第にるいは行へ心が奪われてゆき…。
一方、鈴木行は既婚で、出産を強く望む大企業の一人娘万理江(演:深田恭子)と夫婦関係にあります。しかし、行は、自分で人生を切り開きながら生きていくるいに惹かれ、行動に出るように…。
中村るいという女性は、気丈で強かな一面を持っています。これは、二人の初期の会話内容にも明確に表れています。
「交渉事は断られた時からがスタートだって思ってますので、またご連絡します」
引用元:大石静『セカンドバージン』(幻冬舎)
「そういうの顰蹙買いませんか? 何度も言いましたように、僕は本を出すつもりはありませんので」
「わたし、顰蹙はお金を出してでも買う主義なんです」
「…………!」
そして、本作のタイトル『セカンドバージン』という言葉は、この中村るいの台詞から来ています。
「じゃあもうひとつ、私の秘密を話すわ」
引用元:大石静『セカンドバージン』(幻冬舎)
動きを止めたるいが行を見据えた。
「夫と別れてから二十年、私、男の人を知らないの」
行の表情が変わった。
「ファーストバージンを失うのは、誰にでも普通に訪れることよ。でもセカンドバージンに陥った女が、そこを突破するのは簡単じゃないの。十七歳も年下のあなたを相手に、そんな冒険はしたくないの。(後略)
登場人物たちが躍動感あふれる
前述したように、本作はもともとドラマ制作のために書き下ろされた作品です。このため、物語の冒頭から中盤まではどこか非現実的なまでに話の展開がスピーディでドラマティックであり、おそろしいほどに運命めいています。
さすが脚本家!
たとえば、こんな感じです。
- 偶然にも、シンガポールの地で再会する
- 偶然にも、中村るいの自宅のすぐ隣に鈴木夫妻が引っ越ししてくる
- 盲目の占い師に未来をみてもらったところ、不吉で意味深な忠告をされる
しかも、主要な登場人物が比較的多い割にキャラクター像が個性的かつ明確で、ドラマの役者も驚くほどぴったり当てはまっています。このため、読みながら登場人物をすぐに覚えることができます。
そしてそして、活字を読んでいるだけなのに、どの人物も映像として目に浮かぶように活き活きと動き回るのです。
たとえば、
- とにかくかわいいけど世間知らず、少女趣味的な万理江は「深田恭子」!
- イギリス人の血を引く医者で小説家の秋夫は「布施明」!
- 親の愛情に飢えている中村るいの息子、亮は「綾野剛」!
- 亮と歳の差恋愛中でフレンドリーかつ察しのいい愛子は「YOU」!
占い師に未来を指摘される出来事もそうですが、時にスキャンダルや各人物の秘密に触れるなど話を膨らませつつも、最後まで伏線を残しつつ慎重に回収していく構成となっています。
もともとドラマの各話で視聴者離れが起きないように工夫しているためと思うのですが、本を読み慣れていない人にはすごく良い仕掛けです。適度に刺激があって退屈にはならないし、話の展開に追いつけなくなるほど複雑ではありません。
そして、いったん読むのを中断しても続きが気になってしまう。万人にとって飽きずに読み終えることができる一冊ではないかと。
様々な「フツー」じゃない人たち
いわゆる一般常識に当てはまらない、いろいろな人が出てきます。
タトゥーやピアスを纏って定職に就かず、親の会社に来ては金の無心をする中村るいの息子、亮。
そんな亮の十五歳年上の恋人、愛子。
るいの上司の社長の向井肇は、妻子がいるが好きな人がいて…。
新海社創設の恩があるが気分屋の文壇の重鎮、眞垣秀月。
バツイチでイギリス人の父を持つ医師兼新人小説家、秋夫・ウィリアム・ターナー。
登場人物たちの愛の形も様々ですし、家族の形もそれぞれ。不倫という、道を外れた恋愛を唯一のテーマにした小説ではないことは確かでしょう。
真実の愛と背徳感とのせめぎ合いもさることながら、歳の差恋愛や親子関係の多様性も考えさせるお話です。このように、いろいろな解釈ができる作品ですが、登場人物はみんな何かしらの仕事をしているので、お仕事小説と捉えて読むのも面白い。
また、いわゆる極悪人は出てきません。おそらく最も毒気のある人物として描かれている万理江にも、最後には驚きの展開が待っています。このためか、悲喜交々ですが読後感は爽やかです。
物語は、一貫して中村るいと万理江の視点から展開していきます。この意味では、女性が読んで楽しめる小説だと思いますし、ラストも含め「女は強し!」という感想を抱くこと間違いなしです。
関連書籍
- 大石静(原著)、葉月陽子(著)『ふたりっ子』(文藝春秋):大石静氏は、1996年度に放送されたNHK連続テレビ小説『ふたりっ子』の脚本で、第15回向田邦子賞と第5回橋田賞をダブル受賞。性格が違う双子のヒロイン、姉・麗子と妹・香子の挑戦と、それを取り巻く人間関係をほのぼのと描いた作品です。ヒロインの幼少期は、本作がデビュー作の三倉茉奈・佳奈さんが演じました!
最後までお読みいただき有り難うございました!
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