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【書評】イノベーションでより良い未来を!「システム×デザイン思考で世界を変える」を読む

【書評】前野隆司(著)、保井俊之(著)、白坂成功(著)、富田欣和(著)、石橋金徳(著)、岩田徹(著)、八木田寛之(著)『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』(日経BP) 書評

デザイン思考”という言葉をご存じでしょうか?イノベーションに関する話題でたびたび登場するこの思考法、実はよく理解していなかったので基礎知識を得るために入門書を読んでみました。

今回ご紹介する「システム×デザイン思考で世界を変える」は、慶應義塾大学大学院のシステムデザイン・マネジメント研究科(以降、慶應SDM)の取り組みを交えながら基本的な考え方を伝える書籍です。編著者は、幸福学の研究者としてもよく知られる前野隆司氏。日経BPからの出版です。

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こんな方にオススメ

  • デザイン思考について学びたい方
  • イノベーションを起こして新規事業を創出したい方
  • 世の中をより良くしたい方

システム思考とデザイン思考

まずは、デザイン思考が何なのかをざっくりと理解するために、これまで一般的に使われてきたシステム思考と比較させてみましょう。

 広い意味でのシステム思考とは、物事をシステム(要素間の関係性)としてとらえることです(狭義のシステム思考は因果関係ループのことを指します)。
 デザイン思考とは、観察(オブザベーション)、発想(アイディエーション)、試作(プロトタイピング)を何度も繰り返しながらチームで協創するイノベーティブな活動を指します。

引用元:前野隆司(著)、保井俊之(著)、白坂成功(著)、富田欣和(著)、石橋金徳(著)、岩田徹(著)、八木田寛之(著)『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』(日経BP)

システム思考では論理的な視点を持つ左脳優位の思考法を指すのに対して、デザイン思考では感性を駆使した右脳優位の思考法を指すという理解でまずは大丈夫そうです。

本書は、このシステム思考とデザイン思考の両方の視点を持ちながら、イノベーティブな製品開発やサービスのデザインをしていくための基本的な考え方や技法を紹介しています。

協創(Co-Creation)のための16の技法

イノベーション創出のプロセスで活用する「協創(Co-Creation)のための技法」として、16種類もの技法が掲載されています。

①ブレインストーミング
②親和図法
③シナリオグラフ
④2軸図
⑤構造シフト発想法
⑥フィールドワーク
⑦バリューグラフ
⑧イネーブラー・フレームワーク
⑨因果関係ループ図
⑩CVCA(顧客価値連鎖分析)
⑪WCA(欲求連鎖分析)
⑫ピュー・コンセプト・セレクション
⑬プロトタイピング
⑭手書きの図
⑮即興

引用元:前野隆司(著)、保井俊之(著)、白坂成功(著)、富田欣和(著)、石橋金徳(著)、岩田徹(著)、八木田寛之(著)『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』(日経BP)

「①ブレインストーミング」「⑬プロトタイピング」「⑭手書きの図」あたりはその内容を想像できるという人が多いかもしれません。各技法の詳細は本書をご参照いただければと思いますが、これら技法は図解付きで見開き2ページにそれぞれ分かりやすくまとめられています。

慶應SDMのワークショップでの事例も少し紹介されていますので、実践レベルでどのように活用するのかという点で理解が進みやすいことでしょう。

情熱こそがイノベーションの源泉

本書で心に残った一節に以下があります。

 イノベーションのためにもっとも大切なものの1つは、情熱です。情熱の源泉は、社会問題への「義憤」ないしは正義感や利他心のような俯瞰的な心だと、私たちは考えています。心を揺り動かされる思いがなければ物事は動きません、「世の中を変えたい」「よりよい世界を創りたい」「今のままじゃダメだ」――。このような熱い思いこそが、イノベーションの源泉なのではないでしょうか。

引用元:前野隆司(著)、保井俊之(著)、白坂成功(著)、富田欣和(著)、石橋金徳(著)、岩田徹(著)、八木田寛之(著)『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』(日経BP)

これは、以前ご紹介した守屋実氏の『起業は意志が10割』(講談社)とも通ずるポイントです。さまざまな技法を駆使したところで、必ずよい解決法が見いだせるわけではありません。世界を良くしたいという熱量が根本になければ、突破力のある妙案も生まれないし、そうした状況で考え続ける体力も得られないということなのでしょう。

石の猫

ヨーロッパに伝わる、無意味なルールや習慣を示す「石の猫」という寓話が紹介されていました。下記のサイトでもその概要が紹介されています。

この寓話から得られる教訓はさまざまですが、本書では次のように示されています。

 多くの仕事は前任者の引き継ぎ、先輩や上司の指導、慣習などから学び、継続されています。ときには、立ち止まって「なぜ、これをやっているんだろう?」「最初はどういう理由でこれを始めたんだろう?」という素朴な疑問を投げかけてみましょう。
 実は意味がなかったということもあれば、意外にきちんとした意味があったということもあるでしょう。意味がわかれば、対応することが可能になります。新しいことを考えるときに先人の知恵に立ち返る習慣をもつと、驚きや発見に出会えるかもしれません。
 みなさんの周囲に「石の猫」はありませんか?

引用元:前野隆司(著)、保井俊之(著)、白坂成功(著)、富田欣和(著)、石橋金徳(著)、岩田徹(著)、八木田寛之(著)『システム×デザイン思考で世界を変える 慶應SDM「イノベーションのつくり方」』(日経BP)

耳の痛い話ではありますが、このような「石の猫」は普段意識に上らないだけで、世の中にゴロゴロ転がっているのだと思います。

たとえば、お祭りや季節のイベントなどを例に挙げれば、お正月のおせち料理、ひな祭り、ハロウィーンにクリスマスなどで、「なぜこの料理が必須なのか」「なぜこの行為をしなければならないのか」ということを歴史的によく理解している人はそれほど多くないのではありませんか?

「習慣だから」という理由で続けるのも良いけれど、理由が分かればより面白味をもってイベントに参加できることでしょう。そういう意味で、システム思考とデザイン思考を組み合わせながら日常的に考える癖を持っていれば、人生がより豊かになるのだろうと感じました。

関連書籍

  • 守屋実『起業は意志が10割』(講談社):新しい事業を興したいと考えている方は、こちらの本も是非読みましょう。記事を書きましたので、宜しければお読みください。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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