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【書評】若い世代に贈るお金の教科書。村上世彰氏の「いま君に伝えたいお金の話」を読む

【書評】村上世彰『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎) 書評

2025年初めに大きく報じられた著名人のトラブルに端を発したフジテレビの騒動。一連の報道を見て、「そういえば、20年くらい前にも連日フジテレビに関する報道がなされていたような…」と過去を思い出した方も少なくないことでしょう。

2006年、ライブドア社の堀江貴文氏がフジテレビに買収を持ちかけ、大きな話題となりました。投資の「と」の字も分からなかった若き日の私は、当時「なんだかすごい大きな話になっているな~」くらいの感想しか湧かず。ただ、当時とてもよく見聞きしたのは、堀江貴文氏とタッグを組んだ村上ファンドなるキーワードです。

それから社会人になり、私も人並みに貯蓄と投資をし続けて幾星霜。あらためて話題となったフジテレビのキーワードに、ふと村上ファンドのことを思い出したのでした。

村上ファンド代表の村上世彰氏といえば、投資の専門家としてその後も活躍し続け、2017年出版の書籍『生涯投資家』も話題になった人物。なんと子ども向けの本があるということを知り、さっそく手に取ってみることにしたのでした。

今回は、村上世彰氏自身が日本全国で行った「お金の授業」を通して、子どもたちに伝えたいと思ったことをまとめた一冊、『いま君に伝えたいお金の話』をご紹介します。

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こんな方にオススメ

  • お金を増やしたい!!
  • 資産運用の考え方を学びたい
  • ローンでお金を借りようと思っている

お金を増やしたいなら必読の一冊

先に本書を読んだ母からは、こんな感想がありました。

おかあさん
おかあさん

なんだかこの人、あなたに似ている…

私も読んでみてビックリ! 私によく似た人がそこにいたのです

 僕は小さい頃、貯金魔でした。
 預金通帳に記された金額が増えていくのを眺めるのがとにかく楽しかったのです。

引用元:村上世彰『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎)

私も小さい頃、貯金が大好きでした。本当に大好きでした。他にも、「物事を数字でとらえる」「ゲームに強い」「寄付やボランティアの大切さを知っている」などなど、共通点がたくさんあるでありませんか。そして、重要な共通点として、私もお金を増やすことが割と得意だという点です。

家族や親族のなかで早くからお金に関心を持ち、社会人になってからは貯めたお金を投資で増やしてきた私は、周囲から少し奇異な目で見られることもありました。「そのうちお金で身を崩すんじゃないかと心配だわ…」と言われたこともありました。

が、ありがたいことに資産は今でも順調に増え続けています。そんな私だからこそ、本書で語られているお金についての考え方はまさしく真実であると断言することができるのです。

物事を数字でとらえ、期待値を算出する能力

ただ、村上氏といまの私との決定的な違いは「物事を数字でとらえ、期待値を算出する」能力。この能力がズバ抜けて高いのが、村上氏です。本書で村上氏は、株式投資においては次のように期待値を導き出すことが必要だと述べています。

 (中略)国については成長率や現在のGDP、人口、借金、こうした大きな経済の指標はもちろんのこと、為替レートや土地・住宅の価格、平均的な所得なども全部数字で見ることができます。まずこうしたものをすべて頭に叩き込む。こうした多くの数字を自分なりに頭のなかで整理して考えていくと、世界でのその国の位置や今後の予想が自分なりに見えてくる。いろいろな数字を自分の経験や勘などとすり合わせながら、株だったら? 土地だったら? といろいろな期待値の式に当てはめてみるのです。こうすることで、どこの国でどのような投資をするべきかがおのずとわかってきます。

引用元:村上世彰『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎)

私は、数字で物事を把握することには慣れていますが、頭のなかにそれらの数字をしっかりとは記憶してはいません。期待値を算出する能力も、イマイチです。それもあってか、私はいわゆる株クラ民ではありません。

ここが村上氏との決定的な違いで、だからこそ私はズバ抜けた投資成績が残せていないのだな、と気づきました。

損切りと片づけとの共通点

さて、私はここ数年、家族の遺品整理や生前整理にかなりの時間を投入して取り組んでいます。本書を読んでいると、お金に対する姿勢と片づけに対する姿勢には共通点があることがわかりました。

それは、損切りの考え方についてです。

 物事の雲行きが怪しいとき、「これまでに投じたお金がもったいない」とか、「もしかしたらどうにかなるかもしれない」と、ずるずるしていては、ダメージは大きくなるばかりです。そこから急に回復したり大逆転したりするのは非常にまれなケース。雲行きが怪しくなったら、だいたいそのまま悪い方向に進み続けます。だったらダメージが少ないうちに、「これはもうダメ」とすっぱりあきらめる。あきらめる勇気を持つ。そしてそのダメージを回復することにエネルギーと時間を使ったほうがよっぽど生産的です。

引用元:村上世彰『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎)
わたし
わたし

う~ん、耳が痛い!

これは、高額な品を購入したものの、持て余してしまう心理に刺さる内容です。思い出のある品を不要と認識しつつ、いつまでも捨てられないという悩みに対する解決法にもなりうるでしょう。

不要なモノを捨て、整理・片づけ上手になったらお金が増えた」という実体験はよく聞きます。もしかしたら、片づけの作業は単純労働ではなく、「損切り」スキルを育み投資脳に導く行為なのかもしれませんね。

教育ローンの罠

本書は子ども向けの本ということもあり、進学に関する言及もありました。ここでは、教育ローンでお金を借りるなら慎重に考える必要がある、ということが書かれています。社会人になって放送大学の学生として学びを続けている私にとって、これも心に響く内容でした。

 教育ローンで簡単にお金が手に入るから、大学とか専門学校にでも行って勉強してみようかなというくらいの軽い気持ちで制度を利用してはいけないということです。借りるなら、自分がそのお金を使って勉強することで、将来どれくらいお金を稼ぐことができるかまで考えておく必要があります。その計算がもしもプラスにならないのなら、教育ローンではなく別の方法でお金を得てから学校に行くことを考えたほうがいい。あるいは、進学ではなく就職するという選択だってあります。就職して仕事をしながらお金を貯めて、改めて大学に入ることを考えてもいいのです。

引用元:村上世彰『いま君に伝えたいお金の話』(幻冬舎)

アメリカでは大学の授業料が高すぎて、学生がローンに苦しむという話が以前よく話題になっていました。先進国のなかでは日本の大学は教員の年収が低いほうなので、授業料も諸外国と比べてやや低いのではと思われますが、社会人になって何年も経ってもローンが完済できずにいるというケースは日本でも珍しくはありません。

令和に入ってからは、オンライン会議や残業規制など働き方が大きく変わりつつあります。年功序列型の働き方は今後さらに崩れていくでしょう。だから、一度社会に出てから大学に入るというのは、私も大賛成です。実際、働きながら自分のお金でコツコツと放送大学で学び続けることに喜びを感じます。

↓放送大学に関心を持った方は、まずは公式HPを見てみてください。

↓履修科目に悩んだら、こちらの記事もぜひ参考にしてみてください(*^^*)

投資は社会とつながる行為

2006年のフジテレビ買収事件のときは、堀江氏も村上ファンドもフジテレビという大企業に敵対的な悪者、という語られ方で報道されることが多かったように思います。しかも、最終的に村上氏が堀江氏を裏切ったという形で喧伝され、投資家の冷徹さを人々に印象づけたような記憶があります。

一方、2025年の騒動では、フジテレビ側がそのガバナンスを指摘されて厳しい立場に置かれています。さらに、2024年に開始した新NISA(少額投資非課税制度)を通して、国民の投資への関心が高まっている現在。資産運用は一部の富裕層だけが行う行為ではなく、すべての国民に開かれた行為となりました。

と、ここまで書いてみて、どちらの場合においても、報道の見せ方によって世論が操作されてしまう危険性にあらためて思い至ります。そして、あのとき買収されていたらフジテレビはいまどんな企業になっていただろうか…という考えも頭によぎります。

そしてそして、投資という行為は確実に世の中とつながっているのだ、という事実にもただただ敬服するばかりです。

関連書籍

  • 池上彰、ふじわらかずえ『池上彰のはじめてのお金の教科書』(幻冬舎):池上彰さんも子どもを対象にしたお金の本を出版しています。池上さんならではの分かりやすい説明で、小学生向けに行った講座をもとにして作成されているようです。こちらは絵本で、今回ご紹介した村上世彰氏の『いま君に伝えたいお金の話』よりさらに低学年の子どもにも理解しやすいお金の入門書といえるでしょう。

  • 堀江貴文『我が闘争』(幻冬舎):刺激的な書名ですが、堀江氏の半生を著した自叙伝です。起業のエピソードや話題となったライブドア事件まで、堀江氏の観点で振り返っています。

  • 村上世彰『生涯投資家』(文藝春秋):村上世彰氏の半生記です。文庫本では、Amazonのレビュー数約3000で評価は☆4.5と高評価(2025年4月末時点)です。『いま君に伝えたいお金の話』を読んで村上氏の人生や考え方に関心を持った方にはぜひ読んでいただきたいです。

  • やましたひでこ『1日5分からの断捨離―モノが減ると、時間が増える』(大和書房):せっかくなので片づけの本もご紹介しておきます。お祭り気分で一気にお片付けするのが性に合わない方は、こちらの本が大変参考になると思います。千里の道も一歩から。断捨離は毎日5分から進めていきましょう。記事にしましたので宜しければご覧ください。

最後までお読みいただき有り難うございました!


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